「治療のため」「予防のため」「健康のため」──年齢を重ねるうちに、どうしても薬をのむ頻度は多くなりがちだが、薬には相性が悪いものがある。場合によっては健康被害をもたらしかねないそこで、やってはいけない「薬×薬」の“のみ合わせ”を紹介する。
特に高齢になると体のあちこちに不調が出てくる。そのためか75才以上の41.1%の人が、実に5種類以上もの薬をのんでいるという厚生労働省のデータもある(2016 年社会医療診療行為別統計)。
さらに、薬による健康被害が起きても、それを薬で治療し、どんどん薬が増えていく「処方カスケード」も問題になっている。あなたも知らず知らずのうちに「NG併用」をしているかもしれないのだ。薬剤師の資格を持つライターの高垣育さんが例を挙げる。
「ARB、ACE阻害薬と呼ばれる降圧剤を服用中の人が、解熱鎮痛剤のうちNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に該当するものを併用すると、薬剤性腎障害を起こしてしまうことがあります。腎臓への血流が減少し、短期間のうちに腎臓の働きが急激に低下してしまう。自覚症状としては、尿量が少なくなったり、むくみ、だるさを感じることがあります」(高垣さん・以下同)
NSAIDsといわれると縁遠い感じがするかもしれないが、どこの家庭の薬箱にも入っているような解熱鎮痛剤がこれに該当する。また、一部のNSAIDsは、ニューキノロン系抗生物質とののみ合わせもよくない。
「めまいや震え、頭痛、手足のしびれ、ふらつきのほか、全身に痙攣を生じることもある。NSAIDsによって中枢神経の抑制作用が障害され、中枢神経細胞の興奮が劇的に増大して痙攣が誘発されると考えられています」
こう聞くと、薬をのむのが恐ろしくなってくる人もいるかもしれない。だが、のみ合わせによる被害の多くは、私たち自身の知識で防げる。医師や薬剤師の説明はしっかり聞くことが大事だ。すでに多くの種類の薬をのんでいる人は、多剤併用による健康被害を病気だと思い込んでいる可能性もある。医師の指導のもと、いったん「棚卸し」してみる必要もありそうだ。
取材・文/土屋秀太郎
※女性セブン2022年9月29日・10月6日号