北朝鮮全土の病院では8月下旬から9月初めにかけて、戦争が勃発したとの想定で5日間の戦時対応訓練が行われた。野戦病院の設営や医療器具・機材の運搬、担架で運び込まれた負傷者への対応などが現実さながらに行われたが、実際の北朝鮮の医療は戦時下に対応できるものではないことが明らかになった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
この戦時下医療訓練は2019年以来、3年ぶりで、外国の軍隊が北朝鮮に奇襲攻撃をしてきたとの想定で、全国の病院の医療スタッフのほか、民間防衛隊員も参加した。
訓練初日の早朝、各道(県に相当)の防衛局主導の下、当局が市や郡の病院に「戦争が始まった。緊急医療態勢を敷け」と連絡。各病院には戦時中に必要な救急医療機器や医薬品、テント、担架などが送られ、病院側はそれの器具や薬品などを整理し、リストを作成した。
2日目は、各病院が野戦病院を設置する訓練が行われた。軍の指示では「テントの設営は3分以内」だったが、30分以上もかかった病院もあったという。
3日目と4日目は実地訓練で、ガスマスクを着用しての患者の避難、一般的な負傷者と核兵器や化学兵器による負傷者の治療訓練などが行われた。
ある参加者はRFAに対して、「医療従事者の多くは女性で、野戦病院の設営・撤去や、ガスマスクをつけたまま担架で男性患者を運ぶ訓練は、重労働で、彼女たちは疲れ切っていた」と語っている。
最終日には、民間防衛隊による各病院の評価が行われ、戦時下における今後の治療態勢構築に関して、厳しい指摘がなされたという。
RFAによると、今回の訓練では、支給されたテントは大小バラバラで、医療機器も不足しており、医療従事者や負傷者への食糧も不十分で、電池式の懐中電灯に頼らざるをえない局面も多く、北朝鮮の医療体制は戦争状態で負傷者に対応できるのかどうか疑問が呈されたという。