放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、4年ぶりに中村座を復活させた中村勘九郎についてつづる。
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『いだてん』の頃以来だから相当久しぶりに中村勘九郎に会った。クルンクルンの髪の毛にびっくりして笑ったら「これ天パーなんですよ。キャップかぶってて舞台へ行きゃすぐカツラかぶるから、みんな分からないんですよへへへ」と笑った。父十八代目勘三郎の早逝から10年。中村屋を背負い、ファミリーを引っ張り、歌舞伎界全体の重責も負う。辛く大変な時を過ごしたと思うが40歳ともなり肩の力も少し抜けてきたか、やわらかくユーモラスな受け答えに嬉しくなった。
「それよりホラッ2000年に浅草に父が芝居小屋“平成中村座”作ったでしょ。中村座が10月11月と4年ぶりに復活するんですよ」
「嬉しいネ。江戸っ子はそう来なくっちゃ。オレも一度だけだけど、お父さんと中村座の舞台出て喋ったことあるんだよ」
「覚えてますよ。談志師匠が亡くなったのですぐに父と高田さんで追悼落語会やったんですよネ。談春さん志らくさんも出て、いい会だった」
「オレも出たかったって談志が一番くやしがっていた」
「今回は高田さんも可愛いがっているクドカン、宮藤官九郎の脚本・演出ですから。面白いのなんのって、あの人ちょっと頭おかしいですよネ」
「ちょっとなんて失礼だよ。ほとんどおかしいんだから」
弟の七之助も記者会見で「最近の宮藤さんの脚本には、神がかり的な面白さがあると感じている」とぞっこん。そう言えば、先日宮藤に会ったら「落語の“唐茄子屋”と“不思議の国のアリス”を合体させて歌舞伎を書きました」とよく分からないことをうわ言のように言っていた。落語の『唐茄子屋政談』といえば若き日の私の十八番。立川藤志楼としてどれだけ江戸中で評判を呼んだものか……。大好きな「櫻坂」のライブへも行かずこれから稽古、稽古ですと宣言。本当か。
「イヨッ中村屋!」笑顔を見てるとお父さんにも会いたくなった。
歌舞伎がらみの話題をもうひとつ。飛ぶ鳥を落としちゃ揚げていると噂の講談の神田伯山が熱望した師匠神田松鯉との歌舞伎座での親子会がいよいよ9月28日に昼夜開催。この日は松鯉80歳(傘寿)の誕生日。ゲストには尾上松緑。松鯉が演じる『荒川十太夫』を歌舞伎にして十月に松緑が歌舞伎座公演として上演する。「荒川」は赤穂浪士、堀部安兵衛の切腹で介錯をつとめた下級武士。伯山の大きな夢がひとつ叶った。次は?
※週刊ポスト2022年9月30日号