9月27日の安倍晋三元首相の国葬を間近に控えて、警備が本格化している。1週間前にあたる9月20日には警視庁が東京駅での無差別テロへの警戒状況を報道陣に公開。翌21日には、8月に就任したばかりの警察庁の露木康浩・長官が会場となる日本武道館周辺を視察し、警備現場を確認した。
警察庁では安倍元首相銃撃の警備不備で批判が相次ぎ、中村格・前長官が辞職に追い込まれた。辞職の記者会見で中村前長官が「警察は、警護を一から見直そうと覚悟を決めた」と語った通り、すでに武道館では警備体制が敷かれている。
9月20日に武道館を訪れると、武道館の入り口に位置する北の丸公園の田安門には透明の盾を持った警視庁職員が1人。武道館周辺には4人ほどの警視庁職員が等間隔で周囲を巡回、駐車場には機動隊を乗せる装甲車が4台ほど駐車しており、駐車場入り口にも2人の警視庁職員が待機していた。
すでに物々しい雰囲気が漂っているが、近隣で働く人々はどう受け止めているのか。武道館近くには喫茶店や飲食店も多く、近くに大学も複数あるため普段は学生らで賑わっている。
武道館近くで飲食店を営む店主に話を聞いた。
「今日(9月20日)、麹町署の職員がきて当日の人の流れなどを説明してきました。特に暖簾とか看板について、何を出すな、これをするなということは言われませんでした。ウチは当日も開けます。交通規制こそ敷かれますが、人通りは多くなるので名前も売るいい機会と捉えていますし、商機と考えてますよ」
一方、警察の対応に不満の声も聞こえた。同じく武道館近くで飲食店を経営する別の店主はこう語る。
「午後、初めて麹町警察署の方が直接来られて、当日の説明を受けました。予定では店の近くに献花台ができるということで、献花台に向かう歩行者の流れを規制して、靖国通りの歩道では市ヶ谷方面から九段下方面に向かう歩行者は、靖国神社側の歩道を歩くことになるということでした。もし通行などを規制する場合、通常と比べて人の流れが変わりますし、お客さんが全く来ない可能性もある。補償などについてどうなっているかを聞いたところ、その辺は持ち帰って報告するとのことでした。
当日はお店を開ける予定ですが、不安が大きいです。献花に来た人が入ってくれるかもしれませんが、常連さんとの兼ね合いもありますし、国葬について賛成の人と反対の人がたまたま席が隣り合わせになって、話し声が聞こえてトラブルになる可能性もある。本音を言ってしまえば、トラブルになるくらいなら店を閉めたいという思いもあります」