安倍元首相の銃撃事件から3か月弱、政治家との関係から2世信者の被害まで、様々な問題が浮き彫りになっている旧統一教会問題。その解明の最前線に立つ紀藤正樹氏(弁護士)、鈴木エイト氏(ジャーナリスト)、塚田穂高氏(宗教社会学者)の3人が、これまでの闘いの日々や今後について語り合った。【前後編の前編】
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塚田:地方の大学で宗教と政治の関係やカルト問題などを研究しています。安倍氏の事件後、巻き込まれるような形で統一教会関係の取材や発信が増えました。エイトさんからは10年以上前から統一教会と政治の問題を教えてもらっていました。
鈴木:事件前までは、多くのメディアから「教団名を出さないでくれ」「カルトという言葉を使わないように」と散々注意されてきました。だから今、テレビのアナウンサーが統一教会を名指しして批判するというギャップにちょっと驚いています。ただこれまで統一教会を取り上げてこなかった悔恨から、今度こそきちんと報じようというメディア側の熱意もすごく感じます。
紀藤先生も30年以上、弁護士という立場から統一教会がもたらす被害に警鐘を鳴らしてきましたよね。
紀藤:1992年の合同結婚式騒動の時も、最初は統一教会を批判する報道がほとんどなく、擁護的なニュースが多かった。合同結婚式が終わってから統一教会批判が増えたんです。今回も僕らやメディアがひとつひとつ事実を積み上げていくことで、世の中の流れが変わりつつあると思う。
鈴木:塚田さんは大学に所属しながら、このリスクのある新宗教問題に取り組み続けている。実情と紐付けて研究を続けている学者さんはほとんどいませんよ。
塚田:もとは霊感商法対策弁連の集会などで被害者家族が苦しむ姿を見て衝撃を受け、この問題を看過できないと感じました。学者は従来、「中立」で「客観的」であることがよしとされてきました。ところがオウム真理教事件の際、そうした姿勢が通用しないばかりか、教団の言い分を垂れ流し「擁護」するような醜態をさらしてしまった。
同じ轍を踏んではいけないという危機感もあります。被害や問題に目を向け、教育の場でもカルト問題をどう伝えていくべきか実践しています。おかげで学界では「切り込み隊長」扱いですが。
紀藤:大学の先生がこの問題に取り組むことは、本当にありがたいことなんですよ。弁護士事務所などと比べれば大学のセキュリティは高いとは言えず、手厚く守ってくれるわけではありません。そのリスクを抱えながら発信してくれることに感謝しています。