本誌・週刊ポストが報じた安倍晋三・元首相の国葬の“出来レース入札”問題に新たな疑惑が浮上した。その内容に進む前に、国葬の入札に隠された問題点を整理しておきたい。
国葬の企画演出を受注したのは大手イベント会社「ムラヤマ」。現在は日本テレビホールディングスの100%子会社だ。同社は安倍氏が首相時代に地元後援会関係者を大量に招待して「税金を使った支援者への接待」と批判された首相主催の「桜を見る会」を5年連続で落札。安倍政権時代の桜を見る会は、回を重ねるごとに予算が高額化していったばかりか、業者選定では入札前に同社と内閣府の担当者が打ち合わせしていたことから国会で「官製談合」と追及された経緯がある。
今回の安倍氏の国葬の企画運営業者の選定は内閣府による一般競争入札で行なわれたが、参加したのがムラヤマ1社だったことから、野党側に「事実上の随意契約」と批判されているが、岸田政権は「特定の業者に便宜を図った事実は一切ない」(松野博一・官房長官)と主張してきた。
しかし、週刊ポスト取材班が国葬の入札説明書と関連資料を精査したところ、入札にあたって事実上、ムラヤマ1社しか参加できないような条件がつけられていることがわかった。
その条件とは、入札参加を希望する業者に提出が義務づけられた「履行体制証明書」に、次の項目を書き込まなければならなかったことだ。
〈過去5年以内に、皇族、内閣総理大臣、衆・参両院議長及び最高裁判所長官の全て又はこれと同等の出席があった式典等(要人等を含む1,000人以上が出席)における当該業務に類似する業務(企画・演出及び警備)を行った実績(1回以上)について〉
つまり、過去5年以内に国家的な式典の企画・演出、警備を行なった実績があることが入札に参加できる条件だった。そのことは、入札関連資料にこう書かれていることからもわかる。
〈内閣府は提出された履行体制証明書の確認を行い、その結果、確実な履行ができないと判断される場合、または履行体制証明書について虚偽の実績があった場合には、不合格とする〉
そこで週刊ポスト取材班が政府調達の公開資料などをもとに、条件に該当する国家的式典が過去5年間に何回開催され、どの企業が受注したかを調査したところ、今年5月に那覇市で行なわれた「沖縄復帰50周年記念式典」に係る企画・演出、運営及び警備を電通沖縄が受注していた以外、ほとんど「ムラヤマ」が受注していたことがわかった(「会場借り上げ」を受注したホテルや、式典の一部の設置作業や撤去のみを受注した企業を除く)。
この条件がある限り、事実上、ムラヤマ以外の会社が入札に参加することは困難だったと言える。