多くの国民が注目している、安倍晋三・元首相の国葬。葬儀委員長の岸田文雄・首相に続き、細田博之・衆議院議長、尾辻秀久・参議院議長、戸倉三郎・最高裁長官の三権の長が順番に「追悼の辞」をささげた。それに続いて式壇の前に立ったのは、「友人代表」の菅義偉・前首相。安倍内閣で“女房役”の官房長官として長く故人を支えただけでなく、プライベートでも交流のあった2人のエピソードに、現場の取材陣からもすすり泣く声が聞こえた。
菅氏は、式壇正面に掲げられた安倍氏の遺影に深く礼をしたあと、こう話し始めた。
〈7月の8日でした。信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい、あなたにお目にかかりたい、同じ空間で、同じ空気を共にしたい。その一心で、現地に向かい、そして、あなたならではのあたたかなほほえみに、最後の一瞬、接することができました。
あの運命の日から、80日が経ってしまいました。あれからも、朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミは、いつのまにかなりをひそめ、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。
季節は、歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情にも過ぎていくことに、私は、いまだに、許せないものを覚えます。天はなぜ、よりにもよってこのような悲劇を現実にし、いのちを失ってはならない人から、生命を、召し上げてしまったのか。悔しくてなりません〉
そして、会場の日本武道館近くで行われている一般献花について触れ、〈ここ武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです。明日を担う若者たちが、大勢あなたを慕い、あなたを見送りに来ています〉と、声を震わせた。