ライフ

【正しいがん予防】日本の乳がん・子宮頸がんの検診受診率は欧米の半分という課題

がんリスクを招きやすい行動

がんリスクを招きやすい行動

「たばこで肺がんに」「肉ばかり食べると大腸がんになる」「きのこでがんが予防できる」──2人に1人が罹患する国民病であるだけに、そうした「がん予防」の情報はこれまでも数多く喧伝されてきたが、その精度や信憑性はうやむやだった。米ハーバード大学公衆衛生大学院で疫学・予防医学の道を究め、愛知県がんセンター研究所や東大大学院医学系研究科特任教授などを経て、2021年9月から国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長を務める井上真奈美さんが、正しいがん予防をお伝えする。【全3回の第3回。第1回から読む

 * * *
 時代とともにがんの動向も変化する。

「ひと昔前までは男女ともに胃がんの罹患者が群を抜いて多かったのですが、生活習慣や衛生環境の改善で、胃がんの最大の原因であるピロリ菌感染が減少するとともに激減しました。実際にピロリ菌感染率は80代以上は7~8割以上ですが、50~60代では5割ほど。もっと若い世代はさらに感染率が下がります」(井上さん・以下同)

 胃がんに代わって台頭してきたのが、乳がんだ。1990年代後半から女性のがんの罹患率でトップとなり、2018年には1年でおよそ9万4000人が罹患している。

「乳がんは世界でも最も多いがんです。乳がんが増えた背景には、女性の社会進出が進んで生活習慣や女性ホルモンをとりまく環境が変化し、乳がんを招きやすい環境になってきたことも一因だとも考えられています」

 井上さんが憂慮するのは、日本の乳がんには欧米にない特徴があることだ。

「欧米は閉経後に女性ホルモンのバランスが変化して肥満が増加し、乳がんが増加する。しかし日本は30代後半から乳がんが増加して45才くらいでピークが来て、その後は閉経後にまた増加する。つまり、ピークが2回ある。

 これは韓国やタイなどアジア諸国でも見られる傾向です。人種やホルモンバランス、食習慣の違いなどが影響している可能性がありますが、充分に解明されていません」

日本人女性の受診率は欧米の半分

 日々変化する社会の中でがんを退け、生き抜いていくためにも、エビデンスに基づいた「日本一確かな予防法」を実践しよう。

「予防とともに心にとめてほしいのは、がん検診の重要性。日本の女性の最大の問題は、乳がんと子宮頸がんの検診受診率が低いことです。

 アメリカやイギリスの受診率は8割ほどですが、日本は4割。自治体から無料検診の知らせが届いても、躊躇してなかなか受診しない人が多い。やはり多くの女性は“自分は大丈夫”という過信があるのでしょう。そもそも検診は自覚症状がないときに行うもの。市町村から検診の知らせが届いたら必ず受診してほしい」

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)
《土葬墓地建設問題》「外国人の排斥運動ではない」前外相・岩屋毅氏が明かす”政府への要望書”が出された背景、地元では「共生していかねば」vs.「土葬はとにかく嫌」で論争
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン