歳を取ったと感じやすいのが「目」「視力」ではないだろうか。少しずつ「近視」が進み、40を過ぎた辺りからは「老眼」に悩まされる。しかし、「トレーニング」で失われた視力を回復できる可能性がある。
「視力回復法」を謳うトレーニングメソッドは数多くあるが、近年、世界トップクラスの研究機関で科学的に効果が証明されたのが「ガボール・パッチ」だ。
〈脳を鍛えることで老眼も近眼も視力が向上する〉──2017年、米国の有力紙『ニューヨーク・タイムズ』にそう伝える記事が掲載された。「ガボール・パッチ」によって多くの被験者の視力が回復したことが記事になり、全米で話題になったという。
「ガボール・パッチ」とは何か。眼科専門医の平松類医師(二本松眼科病院)が解説する。
「1971年にノーベル物理学賞を受賞したデニス・ガボール博士が考案した特殊な縞模様の画像のことで、これを用いた視力回復法(平松医師はガボール・アイと名付けた)を実践しています。さらにゲーム性を取り入れたメソッドを新たに作り、22人の被験者を対象に2週間行なって検証したところ、22人中18人に効果が認められ、裸眼視力が0.7から1.2へと、大幅に視力がアップした例も見られました」
具体的には、どんなメソッドなのか。
「やり方を簡単に言えば、ガボール・パッチと呼ばれる縞模様が並んでいる中から、『同じ形のモノ』を探すだけです。1日3分ほど集中して行ないます。『交差法(寄り目にして対象物よりも手前に焦点を合わせる)』などのように特殊な見方をする必要もありません。画像が手元にあればよいので、電車での移動中や仕事の休憩時など、隙間時間でできるのも魅力です」
たったそれだけで視力が向上するとはにわかには信じがたいが、一体どんな仕組みなのか。
「このガボール・パッチを使った視力回復法は、『目から入った情報を脳が処理する能力』を鍛えるトレーニングです。そもそも視力は、眼球と脳の2つで決まります。カメラの機能に喩えれば、眼球はレンズ、脳は画像処理に当たります。ぼやけたモノを見て判別することにより、眼球がとらえた情報を処理する脳を鍛えるのが、ガボール・アイなのです」
平松医師は、「ガボール・パッチ」がなくても、身の回りにあるモノでトレーニング可能だという。
「光沢のない普通紙に書かれた文字(印刷でも可)を裏側から透かして読むだけで、似た効果が期待できます。はっきりと見えないモノを読もうとする行為そのものが、視力回復のためのトレーニングとなるのです」
まずは2週間、試してみる価値はありそうだ。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号