朝晩は涼しい日が増え、日に日に秋の深まりを感じられるこの時期、家でゆっくりと読みたいおすすめの新刊4冊を紹介する。
『大ピンチずかん』/鈴木のりたけ/小学館/1650円
この9月の「第6回未来屋えほん大賞」を受賞したベストセラー。子供が陥るピンチのレベルを数字で、なりやすさを星の個数で表す。例えば氷が舌にくっつくのはレベル3、なりやすさは星2コ。「トイレの かみが ない」(レベル74)、「どしゃぶりなのに かさが ない」(レベル100)などは、大人が親の権威を捨てて自分のドジを語ってきかせる機会でも。親子でアハハと笑いあえそう。
『レッドクローバー』/まさきとしか/幻冬舎/1980円
東京豊洲でヒ素による無差別殺人事件が発生。被害者は富裕層の人々で、無職で孤独の中にあった犯人は「ざまあみろと思ってます」と呟く。月刊誌のライター勝木は12年前に北海道で起きたヒ素一家殺害事件を思い出し、唯一生き残った長女、赤井三葉(レッドクローバー)の消息を探り始める。高橋ユキさんのノンフィクション『つけびの村』と呼応するかのような因習と野望と保身のミステリー。
『ハヤブサ消防団』/池井戸潤/集英社/1925円
明智小五郎賞を受賞してデビューしたミステリー作家の三馬太郎。中部地方の山村に亡父が遺した空き家を訪ね、「香ばしいほどの自然の匂い」にやられて移住を決意。飲みの誘いに応じたり、神社の灯明当番や消防団に入団したりして地域に馴染んでいくが、移住以前から不審な放火事件が続いていたことを知り……。カルト集団が絡むのが、タイムリーすぎてちょっとドキッ。
『ぼくの死体をよろしくたのむ』/川上弘美/新潮文庫/649円
18コの短編の中、七生という正体不明の男性が2編に登場する。1度目は鈴音が美しい筋肉に恋してしまう戸外生活者の男として。2度目は銀座のビルの屋上で、寧子がか弱き「小さな人」をボス猫から救出する冒険の相棒として。SF、サイコロジー、大学サークルなど、時にトボけた設定による奇譚や笑話。旅の鞄に入れる本をお探し中の方、この文庫で3〜4泊は大丈夫ですよ〜。
文/温水ゆかり
※女性セブン2022年10月13日号