目に何らかの症状が出れば多くの人が使う「目薬」。しかし眼科専門医の平松類医師(二本松眼科病院)によれば、その選び方によって「視力低下」を招くリスクがあるという。
「市販のもので言えば、細菌の繁殖を防ぐために『防腐剤』が含まれる目薬の頻繁な使用は、眼球表面の角膜を傷つけるリスクがあり、視力低下を招く可能性があります。これを見分けるには、パッケージに防腐剤不使用などの記載があるものを選ぶとよいでしょう」(平松医師。以下「」内同)
ドラッグストアで見かける「充血解消」の効果を謳う目薬にも注意したい。
「目の充血解消の効果があるとし、『塩酸テトラヒドロゾリン』『塩酸ナファゾリン』『塩酸フェニレフリン』などの成分を含む市販の目薬は要注意。これらの成分がパッケージに記載された目薬は『血管収縮剤』と呼ばれ、血管を細くして血流を少なくすることで、一時的に目の充血を取る効果があります。対症療法としてはたしかに効果があるのですが、繰り返し使用するとやがて血管が太くなり、かえって充血が悪化する可能性がある」
平松医師は、日本人のほとんどが正しい「目薬の差し方」を知らないという。
「私が今まで接した患者さんのうち、正しく差せていたのは5%くらいです。特に多い誤解が、目薬を差した後、『目をパチパチさせる』ことです。目薬を行き渡らせる目的なのですが、点眼直後に瞬きをすると、目薬の成分が涙で流されてしまい、効果が少なくなります。
点眼後は、目をつぶって1分程度はじっとしておくのが正解です。目をパチパチする間違いで視力が下がることはありませんが、傷ついた角膜が誤った差し方で治らずに、視力が戻らないことはよくあります」
併用をやめたら視力回復
差し方を誤ると期待した効果が得られないこともある。
「60代男性に、緑内障の進行を抑える目薬を4種類、処方した時のことです。それでも進行が抑えられず、手術をしないと失明の危険があると判断しかけたところ、男性が4つの目薬を続けざまに差していたことが分かりました。
そのやり方では、前に差した目薬の成分が次々と流れ出てしまいます。5分以上、間隔を空けて差すように指導したところ、悪化は止まりました。初期の緑内障治療では進行を抑える目薬が重要なので、差し方には特に注意が必要です」
目薬を差した後は目をつぶり、目頭に近い鼻の根元を1分ほど押さえると、成分が目の中にとどまり効果が発揮されるという。
たくさんの種類の目薬を差すことで、視力が低下するケースもある。
「緑内障で処方の目薬を差していた70代男性は、市販の目薬も併用して『気になったら差す』を繰り返したところ、角膜が傷つき視力が落ちてしまいました。そこで市販品をやめてもらい、処方の緑内障の目薬と角膜を治す目薬だけを、決まった回数だけ差すように指導したところ、裸眼の視力が0.4ほど戻りました」
目薬の効果を活かすも殺すも選び方、使い方次第のようだ。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号