健康を保つために真っ先に気をつけるべきことが食事。甘いものを控えたり、食材に気を使う人は多いだろうが、健康な体を作るために提唱されてきた「食べ方」の中には、すでに科学的根拠によって否定されているものが少なくない。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんは言う。
「野菜は加熱すると栄養が失われるといわれてきましたが、実際には生の状態でも多少熱を加えても栄養価はほとんど変わりません。むしろ加熱した方が、かさが減ってたくさん食べられる。いまや“生野菜が健康”という図式は成り立ちません」(望月さん・以下同)
厚生労働省が推奨していた 「1日の摂取食品数は30品目」というスローガンも過去の遺物と化している。
「カロリーや脂質の過剰摂取につながるうえ、“30品目食べなければならない”という強迫観念はストレスを生む。主食・主菜・副菜を準備して、できるだけ多くの食材を組み合わせたメニューを心がければ充分です」
調理法や品目に加え、回数についてもかつての常識は否定されつつある。ボストン在住の内科医、大西睦子さんが言う。
「特に朝食は欠かしてはいけないという“朝食神話”は崩壊しかかっています。米インディアナ大学医学部の教授は、『朝食を食べるべきだとする研究の多くは、食品業界から資金提供を受けて行われているため、結論に偏りがある』と指摘しています。加えて、トータルの摂取カロリーが変わらなければ、1日の食事を何回に分けてとっても体重の増減に影響しないという研究データも存在する。
つまり、食事の内容と量に気をつければ、1日3食を厳守する必要はない。2食でも5食でも問題ありません」(大西さん)
流行が衰えないグルテンフリーや糖質制限も、やり方によっては健康を害する恐れがある。
「グルテンフリーはもともと、腸の免疫疾患の一種であるセリアック病の患者に向けて考案された食事法であり、健康体の人に好影響があると実証されたデータはありません。むしろ厳格なグルテンフリーを行うと、小麦に含まれるビタミンB群やミネラル、食物繊維などが不足する恐れがあります。健康を意識して小麦粉を米粉に置き換える人もいますが、米粉は糖質量が多いためかえって肥満や糖尿病のリスクを上げます」(望月さん・以下同)
糖質の過剰摂取が体を蝕む一方で、極端な制限も死亡リスクを上げる。
「特に糖質を動物性たんぱく質に置き換えた食事メニューは脂質の摂りすぎにつながり、健康を害するという調査があります」
糖質をカットしたメニューの総称である「ローカボ食」も同様の危険性が指摘されている。
「健康のためと喧伝される“置き換え食”にはかえって病気のリスクを上げるものが少なくない。人工甘味料を使ったゼロカロリー食品や糖質オフ食品もその1つです。依存性があるうえ、心臓病や糖尿病のリスクを上げる成分を含有します」(大西さん)
1日に摂取する水分量は「2リットル」がひとつの目安といわれてきたが、望月さんは否定的だ。
「確かに人体は1日に2.5リットルの水分を必要としますが、これは食事に含まれる分も合計した数字です。特に和食は水分量が多く、よほど汗をかいた日でない限り、経口摂取する水分は1日1〜1.5リットル程度で問題ありません」(望月さん)
※女性セブン2022年10月13日号