平均寿命が延びたいま、いくつになっても自力で歩ける健康な体作りのために運動は必須だが、方法を間違えればかえって体を痛めつける結果になる。秋津医院院長の秋津壽男さんが警鐘を鳴らすのは早朝のランニングだ。
「起床後すぐの運動は、脳梗塞や心筋梗塞など循環器疾患を引き起こすことがある。就寝中は副交感神経が優位でリラックスした状態ですが、運動すると交感神経が優位になって、一気にアドレナリンが出て血圧が急上昇し、心臓に負荷がかかります。特に持病に生活習慣病がある人は注意してください」
ランニングよりも強度の低いウオーキングや、初心者でも取り入れやすいストレッチも無理は禁物。
「健康を維持するためには、朝から晩までトータルで、7000歩程度歩いていれば充分。“万歩計”に代表される『目標1万歩』はきりがいいというだけで科学的根拠はありません。実際、アメリカの研究でも7000歩以上のウオーキングで死亡リスクが減るとされています。
痛みを感じるほど体に負荷をかけるストレッチも逆効果。特に、一時期流行した180度開脚や胸を床にべったりつけるストレッチは完全なる自己満足。そのものに健康効果はないし、やり方を間違えて脚を痛める危険性もあります」(秋津さん・以下同)
そもそも運動するほどに健康になるという考え方は大きな間違い。東北大学の研究によれば、週に130分以上の筋トレで死亡リスクが上がることが明らかになっているうえ、かつて常識とされていた脂肪燃焼には20分以上の運動が必要という情報も現在では誤りであることもわかってきた。
「体に負担をかけるという意味ではホットヨガも要注意。ヨガは本来、自然環境で体に負担をかけずに行うもの。高温で行うホットヨガは脱水症状の危険があり、心筋梗塞などの循環器疾患を招くことがあります」
運動そのものだけでなく使用する健康器具にも落とし穴がある。
「筆頭格が体に貼って筋肉に電気刺激を与えるEMS。医学的見地から考えると、電気で刺激するだけで筋肉がつくとは考えにくい。もしついたとしても、スクワットのように実際に体を動かしてついた筋肉と違い、日常生活において動作をするときに使えない、実用性に乏しい筋肉です」
運動後、筋肉をつけるためにプロテインを摂る習慣がある人は量に注意したい。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんは、こう話す。
「プロテインを飲むほどに筋肉がついて健康になると勘違いしているケースが散見されますが、過剰なプロテインは脂肪となり肥満を促進します」
※女性セブン2022年10月13日号