テレビの改編期のゴールデン番組といえば、各局ともさまざまな特別番組が目白押しになるものだが、最近は少し事情が異なるようだ。外国などから集めた「映像」をベースに作った番組が増えているのだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその事情を解説する。
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改編期真っただ中の10月1日夜、日本テレビ系で3時間特番『ワールドドキドキビデオ』(19時~)、フジテレビ系で2時間30分特番『衝撃の早ワザ映像150連発!世界のスピードスターGP』(18時30分~)が放送されます。
それぞれのコンセプトは、前者が「超豪華人気者が世界の衝撃映像とにらめっこ対決」、後者が「世界のとんでもないスピード映像150連発」。ともに世界から集めた映像をベースにした特番であり、真っ向からぶつかることになりそうです。
ただ本来、改編期はさまざまな特番が放送されて華やかなムードが漂う時期であり、実際にTBS系が『オールスター感謝祭』を放送するド真ん中のタイミング。しかし、改編期の映像集特番は、この両番組だけではありません。
一週前の22日にテレビ朝日系が2時間特番『世界アニマル&キッズ動画スペシャル』(19時~)、翌23日にもTBS系が2時間特番『神映像グランプリ』(19時~)と、2時間特番『笑える!泣ける!動物スクープ100連発』(21時~)を異例の連続放送しました。
また、TBS系は2日に神業動画の再現を目指す2時間特番『再現できたら100万円!THE神業チャレンジ』(19時~)、3日に2時間特番『世界衝撃映像100連発』(20時57分~)の放送を予定しています。
単に改編期というだけでなく、「視聴者の多い土曜ゴールデンタイムに2局が放送」「休日に次いで視聴者の多い金曜ゴールデンタイムにも2番組を連続放送」したことから、映像集特番の置かれたポジションが上がっているのは間違いないでしょう。
はたしてこのような傾向は、業界のトレンドなのでしょうか。それとも苦肉の策なのでしょうか。
ひと工夫加えてエンタメ度アップ
このところ映像集特番でジワジワと広がっていたのは、単に短い映像を連続して放送するのではなく、ひと工夫加えてエンタメ度を高める構成・演出。今秋の番組でも、『ワールドドキドキビデオ』は芸能人が衝撃映像とにらめっこのトーナメント戦を行い、『世界のスピードスターGP』は“早ワザ”に特化するなどのひと工夫が加えられています。
また、前述したように『再現できたら100万円!THE神業チャレンジ』は、映像集という枠組みから離れて「神業動画の再現を目指す」という一歩進んだコンセプトですし、9月13日放送の『世界衝撃映像VS芸人15組!笑撃アンサー』(日本テレビ系)も、「芸人が映像の結末を予想する」という大喜利を加えることで新たな笑いを生み出していました。
その他の映像集特番でもクイズや写真のコーナーを設けるなど、「ひと工夫しよう」という姿勢が感じられますが、これは裏を返せば、「それをしなければ差別化できず、『視聴率が獲れない』『批判されてしまう』」ということ。つまり、「映像集という番組ジャンルの中で新たな企画をどう作り出していくか」が民放各局のテレビマンに問われているのです。
その意味でズバ抜けて評判がいいのは、日本テレビの『ワールドドキドキビデオ』。「衝撃映像を見てリアクションしてはいけない」というルールを設けることで、緊張と緩和、沈黙と爆笑のメリハリが効いている上に、「トーナメントを勝ち抜くのは誰か」を予想する楽しみもあります。
さらに、「超豪華人気者38人」と掲げつつ、新番組の番宣もできるという自局のメリットも得られることもポイントの1つ。基本的に「映像とにらめっこするだけ」であり、拘束時間も短いため、番宣の俳優たちが通常のバラエティより出演しやすいこともあって、「今回が2年間で8回目」というハイペースの放送につながっています。