長寿番組『笑点』(日本テレビ系)の大喜利メンバーとしてお茶の間の人気者だった落語家の六代目三遊亭円楽さんが9月30日、肺がんのため亡くなった。72歳だった。
晩年は病との闘いだった。2018年に初期の肺がんの手術を受け、翌2019年には脳腫瘍が見つかった。今年1月には脳梗塞を発症し、5月に退院して8月に高座復帰を果たしたものの、その後、肺炎で入院。闘病とリハビリを続けながら最後まで復帰を目指していたが、帰らぬ人となった。
円楽さんといえば二ツ目の楽太郎時代から『笑点』のレギュラーとなり、「腹黒」キャラですぐに人気者に。毒を含んだ時事ネタや風刺ジョークを得意とした。そして、円楽さんを語る上で欠かすことができない人物が、2018年7月に亡くなった桂歌丸さん。2人の“毒舌合戦”は同番組の見どころのひとつだった。
「『歌丸』に『水』と書いて、死に水」
「車へんに『歌丸』と書いて、霊柩車」
「私の故郷コペンハーゲン、あなたはてっぺんハゲ」
円楽さんが歌丸さんの容姿や“寿命”をネタにしてからかい、怒った歌丸さんが「おい、山田くん! 座布団全部持っていけ!」とやり返す。そんなやり取りで笑いを誘い、番組を盛り上げた。もちろん、2人の間に信頼関係があったからこそできた掛け合いだ。
「円楽さんに歌丸さんの容姿イジりや毒舌ネタを勧めたのは、ほかならぬ歌丸さんです。円楽さんは『笑点』メンバーになったばかりのころ、キャラクターが確立できずに悩んでいました。そんななかで歌丸さんから『困ったら俺のことを言いなよ』と助言されたと、歌丸さんへの感謝をインタビューなどで語っていました」(演芸ライター)
感謝があるからこそ、歌丸さんの愛情に容赦ない“毒舌”で応えた円楽さん。歌丸さんの死去後に放送された『笑点』での追悼の大喜利では、歌丸さんに「○○してくれて、ありがとうございました」と呼びかけて最後に一言を付け加える、というお題で、円楽さんは「私の悪口を優しく受け止めてくれて、罵詈雑言にも耐えてくれて、ありがとうございました」と感謝の言葉の後に、「最後に言わせてください……じじい! 早すぎるんだよ!」と目をうるませた。
「円楽さんは肺がんや脳腫瘍の闘病中、よく歌丸さんのことを話していました。晩年、酸素吸入器を付け、一人では歩けなくなっても高座に上がり続けた歌丸さんの姿を思い出して、病魔と闘う力をもらっているようでした。『俺はまだまだ生きるって決めたから、歌丸師匠に、呼びにきちゃダメだよ、って言ってるんだよ』って」(落語芸術協会関係者)
歌丸さんが亡くなってから4年。円楽さんが鬼籍に入った。あの世で再会し、また“毒舌合戦”を繰り広げているだろうか。ご冥福をお祈りします。