Netflixで配信されている『呪詛』、公開中の話題作『LAMB/ラム』など、注目のホラー映画も多い昨今。そこで、ホラー映画を観ていて、ふと感じる疑問や謎について、専門家に解明してもらった。
白装束×黒く長い髪の幽霊がJホラーの代名詞に!
アメリカではジェイソンや『エルム街の悪夢』(1984年)のフレディに代表されるように、男性の殺人鬼が武器を持って襲ってくることが多く、暴力的な表現が目立つ。
一方、日本で幽霊というと、『リング』シリーズの貞子や『呪怨』シリーズの伽椰子のような白い服を着て腰まである長い黒髪の幽霊が主流となり、感情的で女性的。『呪怨』シリーズを世に送り出した映画監督の清水崇さんはこう語る。
「その背景には、宗教的なものや文化の違いが色濃く出ていると思います。日本では、昔から死者は白装束を着ており、自然や情緒を重んじてきたので、白い服を着た女性が音もなく現れるといった幽霊のイメージが強いのだと思います。
ただ、日本人にはそれが当たり前でも、欧米の人から見たら、“なんで襲ってもこないで、白い服で佇んでいるだけの女の幽霊が怖いんだ?”となる。だからこそ、なぜ、その女が幽霊になるほどまでにこの世に恨みを残したのかをていねいに描くことで、海外の人にもその恐怖を伝えることができたんだと思います」(清水さん・以下同)
日本ではゾンビ映画は作りにくい?
日本でも大泉洋(49才)主演の『アイアムアヒーロー』(2016年)など、ゾンビ映画は作られているが、欧米に比べるとヒット作は少ない。「それは、弔い方の違いが関係している」と清水さんは言う。
「ぼくも『ゾンビ映画を撮ってほしい』というオファーをいただくことがありますが、そもそも日本の火葬文化では難しい。というのも、ゾンビは、ハイチに伝わる他者を奴隷のように操るといわれた呪術の1つ。そのさまが、まるで死者のようだったことから、ゾンビ映画の巨匠といわれるジョージ・A・ロメロ監督が“墓場から死者がよみがえり、生きている人を襲い喰らう、頭を撃ち抜かれると再起不能になる”という設定を作ったんです。いま作られているゾンビ映画は、その設定を主軸にしています。キリスト教徒が多い欧米では棺おけによる土葬が主流でゾンビが墓場から生き返る設定は想像できますが、日本は基本的には火葬。ゾンビとしてよみがえる設定には無理が生じやすいのです」