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生涯前向きだったエリザベス女王 際立つ思考の柔軟性、周囲の意見も取り入れた

コロナ禍でも「また会いましょう」と希望の言葉で国民を励ましていた(写真/Getty Image)

コロナ禍でも「また会いましょう」と希望の言葉で国民を励ましていた(写真/Getty Image)

9月19日に国葬が行われ、イギリスのみならず全世界がその死を悼んだエリザベス女王(享年96)。歴史と伝統を誇るイギリスの女王としての重責は、想像もつかないほど大きかったはずだ。そして英国王室には、女王ひとりの努力では解決できないスキャンダルも山積していた。フィリップ殿下は何度も浮気が噂されたが、女王は寛容な姿勢を崩さなかった。英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんが語る。

「元軍人のプライドを捨て、妻より一歩下がって歩かなければならない立場にあるフィリップ殿下の心情を酌み、女王は浮気を詮索しませんでした。夫に支えられ、助けられてきたからこそ、夫の大切さを認識していたのでしょう。昨年、フィリップ殿下が亡くなると女王はひどく落ち込んだといいます」(多賀さん)

高齢者の医療に詳しい精神科医の和田秀樹さんは、夫婦問題に対する女王の姿勢を支持する。

「一時的には怒ることもあるでしょうが、終わった後は気にしない性格ではないでしょうか。『夫はこうあるべし』『妻はこうあるべし』といった考え方は、自分にも他人にも厳しく接するから人間関係が悪化しやすい。特に日本人は『かくあるべし』とガチガチに考え、自分も他人も苦しくする傾向があります。枠にとらわれず、かつ根に持たない緩さや甘さがあった方が生きやすいと思います」(和田さん)

プレッシャーやストレスに対して、ユーモアと笑顔で「乗り越える」こともあれば、時にはしなやかに「スルーする」こともあったわけだ。

伝統ある王室が最大の危機を迎えたのが1992年だ。同年3月にアンドルー王子が妻と別居し、翌月にアン王女が離婚した。6月にはチャールズ国王と故ダイアナ元妃の関係が冷え切り、カミラ王妃との不倫に走ったことなどが赤裸々に綴られた書籍『ダイアナ妃の真実』の抄録公開が始まった。あまりに衝撃的な内容に国民の多くはチャールズ国王を厳しく批判し、王室に逆風が吹き荒れた。

追い打ちをかけるかのように、11月20日にウィンザー城で漏電による火災が発生し、大きな被害が出た。折しもその日は、女王夫妻の結婚45周年だった。4日後、ロンドン市長主催の晩餐会でエリザベス女王はこうスピーチした。

「1992年は純粋な喜びとともに思い出せる年ではなく、“ひどい年”(「アナス・ホリビリス」というラテン語表現)でした」

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