エンゼルス・大谷翔平(28)の記録ずくめのシーズンがフィナーレを迎える。10月4日(日本時間5日)の試合での死球の影響が懸念されるものの、今季最終戦となる5日(同6日)のアスレチックス戦に先発して残り1イニングとなった規定投球回数に到達すれば、規定打席数とのW到達という近代野球における史上初の快挙となる。最終戦に先立ってはチームとの間で年俸3000万ドル(約43億5000万円)の1年契約で合意したことも話題となった。異例のかたちとなった契約は、今後の大谷の動向とも関係してくることになる。
今季終盤戦の大谷は投手としても打者としてもハイレベルのパフォーマンスを続け、試合に出るたびに「トリプル150(150安打、150投球回、150奪三振)」といった史上初の記録を連発した。そうしたなかでの契約合意について、大リーグ研究家の福島良一氏はこう言う。
「日本のプロ野球選手と比べると巨額の契約に見えるかもしれませんが、MLBにおいて投打で2人分の成績を残している大谷の評価としては“格安”と言えるでしょう。大谷は今オフに年俸調停の権利を取得するはずだったが、そのプロセスに持ち込めば前例のない二刀流選手に対する評価として最低でも年俸4000万ドル(約58億円)にはなったと思います」
オフの年俸調停を回避した異例の早いタイミングの契約で、しかも考えられる“相場”よりも安い年俸に決まった背景には、様々な思惑がありそうだ。福島氏が続ける。
「まずチーム側の事情として、エンゼルスはアート・モレノ球団オーナーが身売りを計画しており、買い手となる新オーナーに対して“大谷を保有している”というかたちでチームの資産価値を示したかったのでしょう。
一方の大谷は、オフのトレーニングに集中したいということもあったでしょうし、それに加えて来年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場したいという意欲の表われであると考えられます。オフの交渉は通常、1月から2月にかけて行なわれるが、それがこじれてトレードになったり、調停ということになったりすればWBC出場の妨げになりかねません。それだけは避けたかったのでしょう」
来年のWBCに臨む侍ジャパンを率いるのは日本ハム時代の大谷の“恩師”である栗山英樹監督だ。栗山監督のもとで世界一奪還を目指すチームの一員となるためであれば、たとえ年俸がもう1000万ドル(約14億5000万円)上がるチャンスをふいにしてでも、契約を早くまとめたかったとする見方である。