議員アンケート調査の結果が出た後も、次々と明らかになっている自民党議員と旧統一教会との関係。だが、“肝心の2人”が教団との関係において、自民党に守られ続けていることを知っているだろうか──。一人は菅義偉・前首相。官房長官として安倍元首相と誰より長く時間を過ごしたはずの菅氏だが、事務所は教団との関わりについて一切否定している。
そしてもう一人の大物が細田博之・衆院議長だ。
安倍派の前会長である細田氏は旧統一教会との関係が多く指摘されていたが、議長は在任中は所属会派を離れる慣例があり、自民党は「所属議員ではない」と調査対象から外し、本人もダンマリを決め込んでいた。
しかし、野党側から不信任案提出の動きが出ると、慌ててA4判1枚の文書を公表し、教団関連団体の国際会議をはじめ4回の会合に出席したことや、選挙支援を受けたこと、日本・世界平和議員連合懇談会の名誉会長や日韓海底トンネル推進議員連盟の顧問に就任していたことを認めたものの、記者会見や国会で自ら説明しようとはしない。
旧統一教会と自民党の関係を調査してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏が語る。
「細田氏は、教団関連のイベントなどへの出席を書面で報告したが、注目すべきはそこではありません。安倍派の前会長として、派閥が教団とどう関係を持ってきたかを知りうる立場にあったことです。2016年の参院選では、細田氏がある候補者に統一教会票を回すと打診したが、その候補が断わったために、別の議員に票が差配されたと言われている。同派と旧統一教会の歴史的なつながりについて証言する政治的責任が問われている」
興味深い証言がある。安倍氏の銃撃事件後の7月18日、自民党保守派の青山繁晴・参院議員(無派閥)がブログにこう綴っていた。
〈参院選に向けて、自由民主党の公認作業などが進んでいた時期でした。
良心的な議員がわたしにこう語りました。
「所属する派閥の長から(旧)統一教会の選挙の支援を受けるようにと指示されたが、断った。そのため派閥の長は、その分の票を別の議員に割り振ったようだ」
そこでこの派閥の長を訪ねました〉
〈わたしがこの派閥の長に、事実関係を問うたところ、「各業界団体の票だけでは足りない議員については、(旧)統一教会が認めてくれれば、その票を割り振ることがある」との率直な答えがありました。
わたしは「この宗教団体の支援を、すくなくとも一般の有権者が知らない、明らかにされていないのは問題です」と指摘し、「見直すべきです」と具体例を挙げて諫言しましたが、派閥の長は具体的には答えませんでした〉(青山繁晴の道すがらエッセイより)
このブログの内容は自民党内でも話題になり、「参院選で旧統一教会の票を差配できる派閥の長は、安倍派会長だった細田さんくらい」との見方が広がった。
『週刊ポスト』が改めて青山氏にこの派閥の長は細田氏のことではないかと取材を申し込むと、「この件での取材はお断わりしています。ブログに書いてあることがすべてということでした」(事務所)との回答だった。
取材に応じていない細田氏は国会で答えるべきだろう。