年を重ねれば避けて通れないのが膝の痛みだ。原因に多いのは「変形性膝関節症」で、サポーターを使用して痛みを抑えるケースも多く、中には欧米の技術を使った最新式を謳うものもある。だが、戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんは海外製サポーターが日本人に合っているとは限らないと警鐘を鳴らす。
「変形性膝関節症の患者に対して、“アメリカ式”のサポーターを推奨されることがよくあります。価格が高額であることが多いうえ、アメリカで研究開発された商品はバスケットボールや野球などスポーツ選手用に作られたものがほとんどです。
アメリカはスポーツ医学が進歩していて、けがをした選手向けの商品が充実していますが、膝痛に悩む日本の高齢者に効果的だとは思えない。欧米人向けに作られているため、重いうえに装着も大変で、途中で使用をやめてしまう人も多い。体格がかけ離れた患者にこれをすすめてくる医師は利益目的ではないかと疑いたくなります」(戸田さん・以下同)
人工関節の先進国といわれるアメリカでは、膝の人工関節置換術もさかんに行われている。それに倣う形で日本でも手術を受ける人は増えているが、その前に熟考する必要がある。
「確かに人工関節の技術はめざましい進歩を遂げていますが、アメリカのように簡単に手術を選択すべきではありません。アメリカにおいて手術が日本より多いのは、膝の痛みに対して治療の選択肢が少ないためです。他方、日本では湿布や膝関節へのヒアルロン酸注射など、手術以外にも幅広い選択ができる。
手術をして痛みが取れればいいのですが、症状が変わらない人もいます。一度手術を受けると感染の可能性が生じて注射による治療ができなくなるため、すぐに踏み切る必要はありません」
手術が選択されやすい背景には、日米の保険制度の違いもある。
「アメリカでは日本のように国民皆保険制度がなく、民間保険で治療費を補います。保険会社と医師が相談して治療法を決定するのですが、限度額があるため日本のようにさまざまな治療を試すことは難しく、すぐに行える手術が選択されやすい。
また、日本では同じ手術なら誰が行っても健康保険の点数は同じですが、アメリカでは手術の熟練度によって報酬が加算されます。そのため、医師も手術をやりたがるのです」
※女性セブン2022年10月20日号