日本人に多いといわれる体の痛みといえば“肩こり”。近年、肩こりに加えて痛みを訴える人が急増したのが「首の痛み」だ。横浜市立大学附属市民総合医療センターの北原雅樹医師(ペインクリニック専門医)は、首こりの原因として挙げられることの多いストレートネック(*注)は、スマートフォンやパソコンを長時間使用する影響が特に大きいと言う。
【*注/頭の重さを分散させている頚椎のカーブが、俯いた姿勢を続けることで真っ直ぐに変形すること。首まわりの筋肉が常に緊張し、様々な全身症状を引き起こすとされる】
「スマートフォンを操作する時は俯いたり前屈みになったりせず、目の高さまで画面を持ち上げるようにしましょう。パソコン作業も同じで、座って背すじを伸ばした状態で、首を傾けずにディスプレイを見た時に、視線が画面と直角になるような角度が理想です。背もたれに体重をかけすぎると背すじが伸びないので、背中が軽く触れる程度にするか、背もたれ部分にクッションや丸めたタオルを挟んで背筋を伸ばすとよいでしょう」
肩こりや首こりが生じた時、自力で解決するにはどうすればよいか。
理学療法士の人気ユーチューバーで『オガトレ式! タオル1本で超・超・超かたい体も柔らかくなる奇跡のストレッチ』の著者・オガトレ氏が解説する。
「私が考案したストレッチはタオル1本あれば誰でも簡単に実践できます。繊細で骨が弱い首まわりのストレッチは優しめが基本。反対に、肩まわりは大きな筋肉にアプローチするのでしっかり力を加える必要がある。いずれも、椅子に座って行ないます」
代表的な4つを図解した。まずは首のストレッチからだ。
「後頭筋群ストレッチはタオルを両手で持ち、真ん中くらいを後頭部に当てます。この時、猫背になりすぎないよう、タオルを持つ手は親指側ではなく、小指側に力を入れるのがポイントです。後頭部にタオルを当ててそのまま頭を下げていき、30秒キープ。腕の重みだけで頭を下げるようにすると、首の後ろの筋肉が伸びます」
肩を揉む時に触ることの多い首の付け根部分は、肩甲挙筋(けんこうきょきん)ストレッチで伸ばす。
「肩甲挙筋は肩こり筋といわれるほど硬くなりやすい場所。ストレッチは左右それぞれ行ないます。左側の首の付け根を伸ばす時は、後頭部に巻いたタオルの端を右のこめかみ辺りで右手で持ち、右斜め45度前のほうに伸ばして30秒キープします。この時、左手を右太腿の上に置くとより効果的です」
猫背の人ほど硬くなりがちなのが、左右の肩甲骨の間にある菱形筋(りょうけいきん)だ。
「パソコン作業で背中が丸まると硬くなり、張ってくる場所です。ここを伸ばすには、身体の正面で肩幅の広さにタオルを握り、肩の高さで腕を真っ直ぐ伸ばします。ここから腕を前に押し出していくと、背中は全力で猫背になり伸びます。そして最後は、腕を上下に動かしWの形を作る動きのあるストレッチで締めます」
試してみれば、肩も首も程よくほぐれるのが実感できるはずだ。まずは積極的に身体を動かしてみることだろう。
※週刊ポスト2022年10月21日号