今度こそ認知症治療薬の誕生となるのだろうか。9月28日、エーザイは米バイオジェンと共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」について最終段階の治験結果を発表した。
それによると、1年半にわたり欧米やアジアで約1800人の軽度認知症や認知症の前段階の患者を対象に行なった治験で、同薬を投与したグループは認知機能の悪化を27%抑えられたという。
これまでの薬は脳を活性化させて進行を遅らせることが目的だったのに対し、レカネマブはアルツハイマー型認知症の原因となるタンパク質「アミロイドβ」を取り除く根本治療薬を目指している。「夢の認知症薬」と期待がかかる一方、同社が取り組んだ先行薬「アデュカヌマブ」は昨年に承認見送りとなるなど、開発が一筋縄ではいかないこともたしかだ。
レカネマブに期待はできるのか。順天堂大学医学部名誉教授でアルツクリニック東京の新井平伊院長が解説する。
「ようやく認知症治療の夜明けが見えてきたと言えるのではないか。この治験では有意で非常に信頼性が高いデータが出ており、次世代のアルツハイマー治療薬としてアデュカヌマブより期待できます。ただし、27%の悪化抑制というのは臨床家からすればまだ少し物足りない。理想としては、これが50~70%程度の効果が出るのが望ましいですが、それは今後に期待します。
アデュカヌマブとの違いは、異常なタンパク質アミロイドβに作用する段階が異なる点。アデュカヌマブはアミロイドβ線維やその塊『アミロイド斑』(老人斑)と反応するのに対して、レカネマブはその前段階でより神経毒性が強いとされるアミロイド凝集体『プロトフィブリル』と反応し取り除くとされます。また、症状が出ていないプレクリニカル段階での投与でアルツハイマーにならずに済む可能性も期待されます」
中等度以上に進行した認知症の治療薬ではないが、「早めの投与で予防薬としても期待ができる」と新井氏。
まずは来年後半の米国での承認を目指す。結果はどうなるか。
※週刊ポスト2022年10月21日号