原田「俺ら、“面白いことだけ”やってたんです。コンビが2人とも太っているのも面白いじゃないですか。そういうのをリュックいっぱいに詰めて『売れよう!』と思っていたのにダメなんやと。行き詰まりました」
面白いことをしているのに、ウケない、人気が出ない。そんな矛盾に思い悩んでいたが、2017年に初めてキングオブコント(KOC)準決勝に進出する。
原田「その年、劇場から準決勝に進んだのは、ぼくらと先輩コンビの2組だけ。それもあって劇場ではネタの出番が増えました」
きん「光が見えた気がしましたね。次の年には『ABCお笑いグランプリ』の決勝にも行けて。ちょっとずつ、ゆっくりと、前に進んでいました」
原田「で、2019年には初めてKOCの決勝に。『ビスケットブラザーズってどんなコンビなん?』と、ほかの事務所も含めいろんな芸人さんに興味を持ってもらえたのもこの頃です。2人とも太っているコンビが増えてきたのもうれしかった(笑い)」
そして今回の優勝。注目は高まるばかりだが、「世間的な知名度はまだまだ」と謙遜する。結成当初の2人と同じ悩みを抱える“仲間”のため、今後は知名度に加え集客力も欲しいと意気込む。
原田「ぼくら、“おもろいのに人気ない大阪の若手たち”を、広く伝えられるような存在になりたいんです。叶うなら、大阪のメンバーと一緒に、東京で番組やイベントをやらせてもらえたらうれしいです」
きん「そのためには、まずぼくらに集客力がないといけないんですけどね。(優勝を受けて)たぶん、一時的には見に来てくれる人も増えると思うんで」
原田「先輩にすすめられているのもあって、ゆくゆくは東京進出も考えているんですけど……まずは大阪。大阪のお笑いを全国に広めて、盛り上げたいです!」
自分たちのことは二の次で、大阪の若手たちについて熱く語る。まん丸としたフォルムの2人は、その心も丸くて温かかった──。
【プロフィール】
ビスケットブラザーズ/香川出身のきん(31才)と、大阪出身の原田泰雅(30才)からなるコンビ。2011年結成。『第9回ytv漫才新人賞』、『第51回 NHK上方漫才コンテスト』で優勝した実力派。今年の単独ライブは、初のNGK(なんばグランド花月)公演を成功させた。その初単独ライブDVD『町のクチビル代理店』が好評発売中。
撮影/田形千紘 取材・文/松本まゆげ
※女性セブン2022年10月27日号