11年前の豪雨被害で27.6kmが不通となっていたJR只見線が10月1日に全線開通した。奥会津の絶景が世界的にも注目を集める“秘境鉄道”はいかにして復活を遂げたのか。
写真の力で只見線の奇跡的な復活を支えたのが、年間300日、只見線と奥会津だけを約30年撮り続けている郷土写真家の星賢孝さん(73)だった。被災後いち早く全線復旧の声を上げ、SNSで発信していた写真は海外で大反響を呼んだ。2016年頃から沿線に訪日外国人観光客が急増、只見線は「世界一ロマンチックな鉄道」と一躍有名になった。
「俺は撮り鉄ではないよ。地域の振興のために撮っているんだ。高齢・過疎化が進む奥会津を活性化するには観光で人を呼ぶしかない。その資源が世界に誇る四季折々の絶景。そこに只見線が入ることによって景色に命が吹き込まれる。会津川口~只見間の再開通で沿線絶景は3倍に広がりますよ」
星さんは生まれ育った金山町の霧幻峡に渡し船を50年ぶりに復活させるなど、奥会津の再生に情熱と私財を注いできた。「只見線を撮り鉄、乗り鉄の聖地にしたい」とも話し、撮影地や景観の整備で誘客を促進する。
【プロフィール】
星賢孝(ほし・けんこう)/1948年、福島県金山町生まれ。会社員時代の40代から独学でカメラを始め、SNSを活用し、只見線が走る奥会津の絶景写真を世界に発信している。只見線復旧までの奮闘を描いたドキュメンタリー映画『霧幻鉄道只見線を300日撮る男』(安孫子亘監督)が全国で順次公開中。
撮影/星賢孝
※週刊ポスト2022年10月21日号