9月下旬から10月半ばにかけて、弾道ミサイルを14発も発射した北朝鮮は、国内での戦時体制も強化。金正恩朝鮮労働党総書記の指示で党中央委員会が、企業や官公庁、地方政府などに対して、防空壕の抜き打ち検査を実施し、米国や韓国、日本との戦争に備えるように緊急指令を発していたことが明らかになった。
これを受けて、工場や企業などは防空壕を点検したが、ほとんどの防空壕が長期間放置されており、屋根や入り口の扉に不具合がおきているなどの整備不良だった。報告を受けた金総書記は激怒し、早急に修理するよう指示した結果、作業員らが大量動員され大急ぎで修理に取り組んだという。
北朝鮮の地方政府関係者が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に明らかにしたところでは、党中央委民間防衛部は8月に行われた米韓合同軍事演習を受けて、「祖国を守るための党の民間防衛政策を実行できるように、戦争準備を完了させるための重要プロジェクトとして、各組織や企業などは空襲に備えた十分な防衛体制を敷かなければならない」との指示を出した。
防空壕検査では、具体的に壕の容量、室内照明、耐久性、拡声器の性能などの項目が挙げられたが、「防空壕は地中から掘っているので、雨季には内部に雨がたまり、土壁が崩れる。点検のたびに、作業員は防空壕を急いで直すのに苦労している」と同関係者は話している。
また、ある工場の幹部は「私たちの工場には防空壕が2つあり、『避難所』と呼んでいますが、工場の従業員120人のうち、半分しか入れないほど小さなもので、おまけに検査項目のすべてが水準を満たしていない。生産のノルマがあるので、とても防空壕の整備まで人員を割く余裕はありません」と本音を語っていた。
民間防衛部の役人も防空壕の不備は承知しているが、工場関係者からの賄賂もあって、検査をパスしてしまうこともあるのだという。
この工場幹部は「通常の場合、防衛部の連中も防空壕の状態が悪くても、食事やタバコをもらってごまかすことはよくあることだ。でも政府も本当に小さな地下室程度のシェルターを作っておいて、戦争の準備を完了したとは笑わせるものだ」と述べて、逆に政府の対応を批判したという。