国際情報

深刻化する「宇宙ゴミ」問題 削減への技術革新に取り組む日本のベンチャー企業

地球の周りに漂う、50万個以上あるといわれる宇宙ゴミ。宇宙環境保護の観点からも、宇宙ゴミ削減は国際的な命題となっている(イメージ図/アフロ)

地球の周りに漂う、50万個以上あるといわれる宇宙ゴミ(イメージ図)。宇宙環境保護の観点からも、宇宙ゴミ削減は国際的な命題となっている(c)SWINS/アフロ

 宇宙開発が進むにつれて、問題が深刻化しているのが、“宇宙ゴミ(スペース・デブリ)問題”だ。宇宙ゴミの正体は、機能を停止した人工衛星のほか、正常な打ち上げ活動で排出された部品類や固体燃料ロケットから出るスス、衛星の爆発や衝突事故によってまき散らされた破片などが挙げられる。学習院大学法学部教授の小塚荘一郎さんが説明する。

「問題は、そのゴミを回収せぬまま衛星の打ち上げを続けてきたこと。現在では大きさ1cm以上のものだけで50万個以上あり、しかもそれらが秒速8kmで飛び交っている状態。稼働中の人工衛星の邪魔になるばかりか、衝突してさらなる宇宙ゴミを生む可能性もあります」

宇宙ゴミの回収で活躍する日本企業

 そんな宇宙ゴミの回収に相次いで名乗りをあげているのが、日本のベンチャー企業だ。

「たとえばもともと衛星に強磁石プレートをつけておき、磁石をつけた捕獲機で引き寄せて回収するものや、衛星に仕込んでおいた導電性の長いひもを垂らして軌道から外すものなどがユニークです。どちらも最後は地球の引力を利用して大気圏に突入させ、焼失させる。こうした宇宙ゴミ削減への技術革新は、日本は他国をリードしているように思います」(小塚さん)

機能を停止した衛星は宇宙空間を漂う宇宙ゴミとなる。日本の技術で宇宙ゴミを減らすための試みが始まっている(写真/アフロ)

機能を停止した衛星は宇宙空間を漂う宇宙ゴミとなる。日本の技術で宇宙ゴミを減らすための試みが始まっている(c)NASA/ZUMA  Press/アフロ

衝突の可能性がある小惑星は約3万個!

 宇宙ゴミ問題同様、軽視できないのが、地球への小惑星衝突というシナリオだ。恐竜が絶滅したのも、いまから約6600万年前、直径10km級の小惑星が衝突したことで舞い上がった粉塵が太陽光を遮り、寒冷化による地球規模の気候変動が起きたためといわれている。

 NPO法人「日本スペースガード協会」では、そうした地球に衝突する可能性のある小惑星や彗星を日頃から探査・観測している。

「地球に接近する軌道を持つ小惑星は約3万個発見されていますが、幸い直径1km以上の巨大な天体が接近してくる可能性は数十万年から1億年に1度あるかどうかというレベルなので心配はしなくていいでしょう。

 問題は、地球に接近する直径140m以上の小惑星。推定2万5000個あるのですが、そのうちまだ40%しか発見されていないのです。頻度こそ数百年に1度程度とみていますが、衝突の危険性はグンと跳ね上がります」(事務局の浅見敦夫さん)

 もし140mクラスの小惑星が秒速20kmで衝突した場合、衝突地点には直径2.6km、深さ560mのクレーターができるほどの衝撃だという。もし東京駅に衝突した場合、被害範囲は半径約50km(東京・神奈川・千葉・埼玉)に及ぶ計算だ。

「今後100年間は地球に衝突する小惑星はないといわれています。しかし、まだ発見されていない小惑星も数多くあるので、天体によっては発見から衝突まで数日に迫っていることもありえるでしょう。もしそうなったとき、どうやって自分や家族を守るか。誤情報やデマに踊らされぬよう、避難方法や避難先のことまで日頃からシミュレーションしておくことをおすすめします」(浅見さん)

取材・文/辻本幸路

※女性セブン2022年10月27日号

2015年5月、ブラジルの北部で発見された、インドの衛星を載せたロケットの破片。宇宙ゴミは地上にも落ちてくる危険性が(ロイター/アフロ)

2015年5月、ブラジルの北部で発見された、インドの衛星を載せたロケットの破片。宇宙ゴミは地上にも落ちてくる危険性が(ロイター/アフロ)

関連記事

トピックス

ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン