ワクチン接種が始まって以降、当日のキャンセル分や冷凍庫の閉め忘れなどで、少なからずワクチンは廃棄されてきた。しかし、今回はケタが違う。われわれの税金で購入されたワクチンの99%以上が国内で使われることなく“廃棄”されていたのだ。しかもその数は今後さらに増えるという。あってはならない現実を見逃してはいけない──。
食料品や日用品の値上げラッシュが止まらない。日本銀行が10月13日に発表した9月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年前に比べて現在の物価が「上がった」と回答した人は91.8%に達し、14年ぶりの高水準となった。
一方、岸田内閣は物価高を招く円安や原材料高騰の対策に及び腰だ。そのうえ、たばこ税や金融所得課税、法人税などの増税を進める方針とされ、永田町からは「岸田首相は消費税を増税したがっている」との声まで漏れてくる。しかし物価高で国民の負担が増すばかりの中、政府が壮大な「無駄遣い」をしたことはあまり報じられない。
厚生労働省は9月末、英アストラゼネカから購入したすべてのワクチンが有効期限を迎えたため、国内での接種を終了すると発表した。まさに「不遇」のワクチンだった。厚労省は1億2000万回分のワクチンを購入する契約を同社と交わしたが、副反応として血栓が生じるケースが海外で報告され、国内の接種対象は原則40才以上に限定された。
そのため、実際に供給されたワクチン5770万回分のうち、自治体に配送されたのは20万回分。しかし、実際の接種回数はもっと少ない12万回弱で、わずか0.2%にとどまった。政府は5770万回分のうち約4400万回分を海外に無償で提供、残る1350万回分は廃棄した。さらに約6230万回分をキャンセルし、支払い済みのうち必要な経費を除いた金額が同社から返金されるという。
問題はワクチンにかかった費用が不透明であることだ。政府は2.4兆円の予算を投じ、米ファイザー、米モデルナ、アストラゼネカ、米ノババックスと計8億8200万回分のワクチン供給契約を結んだ。だが各メーカーにいくら支払ったかの内訳やアストラゼネカへのキャンセル料の有無、返還される金額の詳細などは明らかではない。
そもそもワクチンの価格は最重要の機密事項であり、各国政府やメーカーはワクチンの値段を公表していない。だが日本の場合、8億8200万回分の購入に2.4兆円の予算を計上しており、これによって接種1回あたりの平均価格は約2700円の計算になる。
「各国と比べて日本は“割高”の価格設定です」
そう語るのは、名古屋大学名誉教授の小島勢二さんだ。