中国はエチオピアの首都アディスアベバに約8000万ドル(約120億円)の資金を提供し「アフリカ疾病管理センター(ACDC)」を建設し、今後数カ月以内に開設する予定だ。このほかにも、中国はアフリカ諸国に病院や医療施設を無償で建設しており、これを総合して「健康のシルクロード」と宣伝攻勢を強めるなど、アフリカでの政治的影響力の強化を進めている。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
ACDCは当初、米国と中国、アフリカ連合(AU)の3者の連携で構想されていたが、トランプ政権下で米政府と中国との関係が悪化し、米国が世界保健機関(WHO)を脱退したため構想が崩れ、中国とAUの協定として作り直されたもの。
米国の戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアディレクターで、元ホワイトハウス国家安全保障会議アフリカ問題担当ディレクターであるキャメロン・ハドソン氏はVOAに対し、「ワシントンはACDCにもっと関わりたかったと思うが、中国が管理することになったことで、手を引かざるを得なくなった」と指摘する。
この中国の目的について、ハドソン氏は「中国はACDCを使って、アフリカ諸国の内情を探る諜報基地の要素をもたせようとしているのではないか」と分析する。
中国はすでに1960年代からアフリカの保健事業に携わってきたが、国際的な健康被害危機を受けて北京が関与を強めたのは、実は2014年から2016年にかけて西アフリカで発生したエボラ出血熱で多くの犠牲者を出し、さらに3年前の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大以降だった。
中国は「健康シルクロード」を構築することによって、アフリカへの経済投資を増加させるとともに、アフリカに対する政治的、外交的な影響力をより強化させようとしているのは間違いない。