ライフ

放置すれば「がん」になる肝硬変 問題なのはアルコールよりも「糖質の過剰摂取」

体重が急増した人は要注意(写真/GettyImages)

体重が急増した人は要注意(写真/GettyImages)

 夫とふたりで人間ドックを受けた主婦の森山裕子さん(62才・仮名)は、自身だけが肝硬変と診断された。

「夫の定年後、会社の健康診断がなくなった夫につきあって受けただけだったので、まさに青天の霹靂。毎晩、晩酌を欠かさない夫に『肝臓を悪くするわよ』なんて言っていた自分がまさか、といまでも信じられません。

 しかも、もう少し発見が遅ければ肝臓がんになっていたかもしれないと聞いて、体が震えました。お酒も飲まないし、最近疲れやすくなったぐらいでどこも痛まなかったのに、いつの間に進行していたのでしょうか……」

 多くの臓器は不調があると、痛みやかゆみ、息苦しさなどといった「症状」でSOSを発する。一方、肝臓のように自覚症状がないまま病気が進行し、気がつけば手の施しようがなく死の淵に立たされる「沈黙の臓器」もある。

肝臓の敵はアルコールより「糖質」

 森山さんの体が無意識のうちに蝕まれたように、肝臓は自覚症状が出る頃には手遅れになっていることが多い。肝臓は、解毒や代謝などの機能が低下すると「肝硬変」になり、さらに症状が進むと「肝臓がん」へと進行する。

 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長で医師の上昌広さんは、現代人の肝臓がんの多くは、「脂肪肝」が由来だと指摘する。

「かつて肝硬変や肝臓がんの原因は、B型・C型のウイルス性肝炎であるケースが多かった。しかし肝炎が薬で治療できる時代になり、悪化して硬変やがんになる前に根治することが可能になりました。

 代わって問題になっているのが、肝細胞の3割が脂肪化して臓器がふくらむ脂肪肝です。放置すれば肝臓の細胞が壊れて肝硬変や肝臓がんになります」

 きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんは、肝臓の異変は早期に手を打つことが大切だと話す。

「肝硬変まで進行すると、肝臓の機能をもともとの健康な状態に戻すことは非常に難しい。脂肪肝という初期段階で治療したり、生活習慣を見直せば、まだ充分に回復の余地があります。そのためには、早めに異変を把握しなければなりません。ところが肝臓の病気は、痛みや違和感として自覚しにくい。そこで注目すべきは、『血液検査』の値(AST・ALT・γ―GTP)です。肝臓の異変は、血液の数値に如実に表れるのです。検査結果が悪ければ、きちんと病院を受診して、超音波検査を受けてほしい。

 また、1年単位で『体重』が急激に増えた人は要注意。脂肪肝の兆候です。1年に2回の頻度で検査を受けておけば見逃すことはまずありません」(菊池さん)

 こまめな検診とともに取り組むべきは日常における生活習慣の見直しだ。

「よく“アルコールや脂が肝臓に悪い”といわれますが、それ以上に問題なのは『糖質の過剰摂取』です。糖質は食事として体内に取り入れられると肝臓に運ばれ、エネルギー源として利用されますが、余った分は中性脂肪に作りかえられ、筋肉や肝臓に蓄えられていく。日本人の食事は米など炭水化物が多く、たんぱく質や野菜のおかずが少ない傾向にある。主食を減らしておかずが多い食事を心がけましょう」(上さん)

※女性セブン2022年11月3日号

【肝臓】気をつけるべき病気

【肝臓】気をつけるべき病気

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン