中国の習近平国家主席に健康不安説がささやかれている。10月16日に開幕した中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)の冒頭、習氏は政治報告を発表したが、前回の第19回大会の報告が約4時間だったのに比べて、今回は約1時間50分と半分以下となった。それに加えて、疲れた表情で声にも張りがなく、時々咳をするなど、明らかに体調が悪そうだった。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
台湾在住の政治学者で、1989年6月の天安門事件で逮捕・投獄された民主化運動指導者の王丹氏はVOAの取材に対し、今回の第20回党大会について、「5年前の第19回党大会の高揚感とは打って変わって、司会を務めた李克強首相は息を切らしながら本を読んでいるような感じだった。 政治報告を読み上げる習近平主席の疲れた表情も5年前の勢いとはどこか違う」と指摘する。
記者団に配布された報告文を読むと、習氏が演説したのは、正式な報告全文の半分程度であることがわかる。
習氏が省略した部分は、習氏が10年前、胡錦濤元主席から党トップの座を譲り受けた際に、どれだけ党内の問題が大きかったかが、かなり強い言葉で詳述されている部分と、習氏がこれらの多くの問題を解決していったかを強調した部分だった。
これについて、ある研究者は「大会で省略しても、正式な報告文は記録に残るわけで、大会で体力と時間を使ってまで、無理して読み上げる必要を感じなかったのではないか」と指摘する。
また、VOAは習氏が9月初めから2週間、全く動静が伝えられなかった事実を挙げたうえで、党内の消息筋の話として「それ以前に香港を訪問したり、国内の地方視察を精力的にこなし、さらに党大会の政治報告起草委員会での原稿準備など多忙を極めており、疲れがたまっていたのは明らかだ。この動静が途絶えた2週間で報告全文を完成するため、缶詰めになっていたからだ」と明かしている。
この2週間の動静不明期間中、軍のクーデター説が伝えられなど、不穏な空気が流れたが、習氏が最高指導者として君臨し続ける限り、今後もことあるごとに、習氏の健康不安説が流れるのは避けられないところだろう。