英国空軍の元パイロットが、中国人民解放軍にリクルートされ、中国空軍パイロットに英国軍の機密情報や飛行技術などを教えて大金の報酬を得ていたことが明らかになった。イギリス国防省は事態を重く見て、元パイロットらに中国側の誘いに乗らないよう警告するとともに、中国側に対して「断固とした措置をとる」としている。
その後、オーストラリア軍も、同じように空軍の元パイロットが中国空軍にリクルートされていた疑惑を調査中であると発表。さらに、ニュージーランドやカナダ、米国でも元パイロットが狙い撃ちにされ、中国に渡っていた事実が明るみに出ている。BBCやロイター通信などが報じた。
英国防省報道官は、「中国によるパイロットのヘッドハンティングは現在進行形で続いており、最近になって強化されている。最大で30人の元イギリス軍パイロットが中国人民解放軍の訓練に参加した」などと発表した。
退役した元パイロットらは中国に対し、西側の軍用機やパイロットの運用方法に加え、台湾などをめぐる紛争時に重要となる情報の理解を助ける仕事に従事しているという。
同報道官は、「中華人民共和国の人民解放軍兵を訓練するために、英国軍の現役パイロットや元パイロットをヘッドハンティングしようとする中国の採用計画を阻止するべく、断固とした措置を講じる」としている。
ある軍関係の情報筋はBBCに対して、「元パイロットには大きな利益が提示されており、最大で23万7911ポンド(約4000万円)が提示されたケースもある」と明らかにした。
イギリス政府は2019年に、少人数の元パイロットらが中国軍に関与したことを把握。その際、個別の事案として対応していくなかで、中国が運営している南アフリカのテスト飛行専門学校を通じて、中国側からリクルートされたことをつかんでいた。現在、採用活動が大幅に活発化しており、実態の発表に至ったという。
BBCは同学校の関係者の話として、中国は同学校を通じて、英米豪カナダ・ニュージーランドといった「西洋ファイブ・アイズのテストパイロットをターゲットにしている」と報じている。