「政権の寿命」を見る指標が内閣支持率だ。過去の短命首相には、「支持率20%」ラインで退陣したケースが多い。しかし、岸田文雄・首相は就任1年以内に総選挙と参院選を乗り切ったことで、解散・総選挙さえ打たなければ今後2年間は国政選挙はない。国民が選挙で首相を交代させることはできない。
そのため、自民党内には、「どんなに支持率が下がっても、低空飛行で政権は続くのではないか」(閣僚経験者)という見方があり、岸田首相も国民の批判を楽観的に考えているようだが、そうは問屋が卸さない。
岸田内閣には過去の短命政権との共通点が数多くあり、先行きを暗示しているからだ。歴代の短命総理がどのように政権を追われたか、岸田首相との共通点を探りながら辿ってみる。
政権の成り立ちも置かれた状況もそっくりなのが海部俊樹内閣(1989~1991年)だ。
海部首相は就任してしばらくは高い支持率だったが、実態は竹下登・元首相と金丸信・元副総理という実力者の傀儡政権だった。政治生命を懸けた政治改革(小選挙区制導入)が自民党の反対で潰されると、海部首相は「重大な決意」と解散を口にするが、自民党から解散権を封じられ、引きずり下ろされるように退陣した。
岸田首相も就任当初は高支持率で、実態は麻生太郎・副総裁、安倍晋三氏という実力者の影響が強かった。安倍氏の死後、政権の命運を懸けて「旧統一教会の解散手続き」を進めようとしているが、岸田首相の教団解散の方針に自民党内の抵抗が予想される状況もそっくりだ。政治評論家の有馬晴海氏が語る。
「これまで旧統一教会への解散命令請求に消極的だった岸田首相が、突然、質問権行使を指示したことで、自民党内の教団融和派からは『旧統一教会の活動は去年と変わらないのに、なぜ今になって解散させるのか』と批判され、逆に教団追及派からは『なぜ、今まで消極的だったのか』という批判の声が上がっている。これで党内を抑えられなくなれば、海部総理のような状況に置かれる可能性はあるでしょう」