10月30日、日本シリーズの第7戦が行われ、オリックスがヤクルトを破って4勝2敗1分で26年ぶりの日本一に輝いた。最高殊勲選手賞(MVP)はラオウこと杉本裕太郎外野手が受賞した。2割3分1厘と打率はそこまで高くなかったが、第4戦、第6戦で決勝打を放った。優秀選手賞はオリックスの山崎福也、吉田正尚、ヤクルトの塩見泰隆、敢闘賞はヤクルトのホセ・オスナが選ばれた。
「MVPの人選は、短期決戦では打者が有利になりがち。前回、オリックスが日本一になった1996年も、3セーブを挙げた抑えの鈴木平ではなく、4番のトロイ・ニールがわずか3安打、打率1割7分6厘でMVPを獲得しています。1戦目は逆転タイムリー、2戦目は決勝タイムリー、5戦目は逆転の決勝タイムリーで6打点を稼いだ。シリーズでは、数字以上に内容や印象がより重視される傾向があります」(野球担当記者。以下同)
20世紀の頃から日本シリーズのMVPは投手よりも野手が受賞しやすかった。なぜなら、投手は先発での2勝が必須条件といっても過言ではなかったからだ。
「たとえば、1990年代の投手のMVPは3人いて、1992年の石井丈裕(西武)、1993年の川崎憲次郎(ヤクルト)、1994年の槙原寛巳(巨人)がいずれも先発で2勝しています。この頃は中4日で投げる先発も珍しくなかったですが、近年はほとんどなくなっている。今年の宮城大弥は中4日で行きましたけど、山本由伸の故障がなければ、その登板間隔にはならなかったでしょう。最近はかつてより投手がMVPを取る確率は減っています」
この10年の日本シリーズMVPを見ると、投手は2013年の美馬学(楽天)、2017年のサファテ(ソフトバンク)と2人だけ。それ以外の8年は野手が獲得している。
「美馬は先発で2勝、サファテはリリーフで1勝、2セーブを上げており、共に日本一を決めた最終戦の勝利投手になっています。サファテはその第6戦で3回を無失点に抑え、その裏にサヨナラ勝ちで日本一が決まった。これが1回を投げてのセーブだったら、MVPになっていたかどうか。現代野球では先発完投が少なくなっており、特に短期決戦ではどんどん投手を注ぎ込んでいく。今年のオリックスは象徴的で、先発の山崎福也が第2戦に4回無失点、第6戦に5回無失点で降板している。もう少し投げて2勝していたら、山崎がMVPの可能性もあったかもしれません」
今シリーズ、オリックスの先発最長イニングは第3戦の宮城の5回3分の1だった。中嶋聡監督は先発が無失点に抑えていながら、第2戦は4回、第6戦は5回、第7戦も5回で交代させている。