発育期にもかかわらず、運動不足の子供たちが急増中だ
コロナ禍で学校生活が何かと制限されて以降、小・中学校生の体力低下や肥満傾向が見られているという。別掲の折れ線グラフをご覧いただこう。これは、小学5年生・中学2年生の男女を対象にスポーツ庁が実施したスポーツテスト『全国体力・運動能力、運動習慣等調査』の結果だ。コロナ禍以降、学年・男女を問わず、体力が急落していることがわかる。
同テストは全国の小学5年生と中学2年生全員を対象にスポーツ庁が2008年度から実施。2020年度はコロナ禍の影響で行われなかった。2年ぶりの実施となった2021年度に小学生約103万人、中学生約98万人がテストを受けた。その内容は、【1】握力【2】上体起こし【3】長座体前屈【4】反復横とび【5】20mシャトルラン(中学生は20mシャトルランか持久走の選択)【6】50m走【7】立ち幅とび【8】ソフトボール投げ(中学生はハンドボール投げ)の8種目。運動時間や生活習慣、肥満度の状況なども調査する。
最新となる2021年度のスポーツテストの平均点を都道府県別に見てみよう。
小学生男子の1位が大分県。これに福井県、石川県、秋田県、埼玉県が続く。一方、最も点数が低かったのが愛知県で、これに山口県、大阪府、滋賀県、兵庫県が次ぐ。
小学生女子の結果も、登場する顔ぶれが似ている。1位が福井県で、大分県、秋田県、茨城県、石川県が続く。一方、最も点数が低かったのが愛知県で、神奈川県、兵庫県、滋賀県、大阪府と続いている。
小児科専門医で、小児肥満外来を設けている『武蔵小杉森のこどもクリニック』院長の大熊喜彰さんはこう語る。
「この調査を見ると、『長座体前屈』という柔軟性を測る種目以外、どの種目も軒並み点数が低くなっています。背景にあるのは、間違いなくコロナ禍です。
当クリニックでもコロナ禍以降、肥満の子供たちが増えています。小・中学生の体力や運動能力の低下は肥満の大きな要因の1つであり、子供たちの将来の健康に悪影響を及ぼさないか心配です」
子供の肥満は大人になっても継続する可能性が高い、と大熊さんは指摘する。
「子供たちの肥満が軽度・中等度であったとしても軽視できません。なぜなら、そのうちの約45%は大人になっても肥満傾向が続くからです。さらに、高度肥満の子供たちの75%は成人後も肥満になるといわれています。
肥満は動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。つまり、肥満の子供は、成人病など寿命の縮まる病気に罹患する確率が将来的に高くなる恐れがあるのです」(大熊さん・以下同)
ちなみに、「肥満傾向の子供」といった場合、標準体重より20%以上重い子供を指す。その「肥満傾向の子供」の割合の推移を示したのが上グラフだ。これを見ても、コロナ禍以降、ほぼ全学年で増加しているのがわかる。
「国は2020年春、全国の小中高校などに一斉休校を要請し、それが解除された後も部活動などを制限する策をとりました。その結果、子供たちの“おうち時間”が増加したわけですが、もともと運動の嫌いな子は体育すらしなくなり、運動好きな子も『外に出ちゃダメ』と言われ、体を動かす機会が減った。子供にとって大事な発育期に運動習慣がストップすることとなってしまった影響はとても大きいです」