最新の科学や研究をもってしても未知の部分が多いのが、人体だ。『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』の著書がある外科医の山本健人さんが言う。
「たとえば、肛門には便を排出するだけでなく、“液体”と“気体”を一瞬で識別する機能があります。おならと便を識別して、排出するものを調整できなければ、大変なことになってしまう。私たちの体には、人工的に作ることができない高度なシステムが備わっているのです」
山本さんによればそのシステムが備わった内臓には、性格や容姿のように一人ひとり違った“個性”があるという。
「胃や大腸、肝臓といった臓器にも、身長や体重のように“個性”があり、同じ日本人でも長さや大きさは少しずつ異なります。昔から喧伝されてきた『日本人の胃腸は欧米人より長い』という言説のように単純な差はないものの、人種による臓器の個性の差もあります」(山本さん)
「病気は遺伝する」という考えは、必ずしも正しくない。
「遺伝と病気の関係は大変複雑です。特に生活習慣病は遺伝的な要因もありますが、環境や普段の生活も同じくらい影響する。『特定の遺伝子に異常が起こったら高血圧になる』というシンプルなものではありません」(山本さん)
ストレスは病気のリスクを上げるといわれるが、ストレスがまったく存在しない生活もまた、体を蝕む。秋津医院院長・秋津壽男さんが言う。
「癒し系グッズや抗ストレス効果をうたう健康食品が人気ですが、人間にとって適度なストレスは必要です。ストレスゼロで刺激のない生活を続けていると、かえって免疫力が低下したり、認知症のリスクを高めたりする可能性もあります」(秋津さん)
特に注意すべきはリラックス効果がうたわれる緑との接し方にまつわる誤解だ。同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さんが言う。
「雑草がおい茂っているほど緑が多い地帯に住んでいる人は、うつ病などの有病率が高いという調査結果があります。一方で、街路樹など適度な、また整った緑が多い地帯であれば、ストレスが減少します。引っ越しを考えるときは、周辺環境をよく考えた方がいいでしょう」(石井さん)
※女性セブン2022年11月10・17日号