11月2日、広島の長野久義外野手(37)が無償トレードで巨人に移籍すると両球団が発表した。長野は2019年、FAで巨人に移籍する丸佳浩(33)の人的補償として広島へ。レギュラーで出続けていた巨人時代のような成績は残せなかったが、頼れるベテランとしてチームメイトにも慕われていた。
「FAの『人的補償』選手を『無償トレード』で古巣に戻す、ということに違和感がある人もいるかもしれませんが、両チームの思惑が合致した結果でしょう。そもそも広島は、新井貴浩新監督の元で若返りをはかりたい。今年FAだった西川龍馬と野間峻祥の残留が決まったことで、外野のレギュラー争いも激しくなる。シーズン途中でベテラン・秋山翔吾が加入したことも大きい。推定年俸1億2000万円の長野を巨人に移籍させることで、総年俸を圧縮したいという狙いもあったのでしょう」(プロ野球担当記者。以下同)
巨人時代は首位打者や最多安打を獲得するなど主力として活躍していた長野だったが、広島移籍1年目は初めて出場試合数が100を割り、スタメン起用は40試合だった。2年目は95試合で打率2割8分5厘、10本塁打、42打点と活躍したものの、今年は58試合で打率2割1分1厘、3本塁打、15打点に終わっていた。では、巨人側のメリットとは何か。
「来季は38歳ですし、巨人もそこまで戦力としては計算に入れていないかもしれません。それよりも引退後のコーチ就任を含めた移籍だと思われます。長野と同じく若手に慕われていた内海哲也が同じ年に西武へ人的補償で移籍した。今年引退して、来年からは西武の投手コーチになります。巨人でエースとして一時代を築いた内海が、引退後、巨人ではなく他球団でコーチになるのは、やはり忸怩たる思いもある。
その反省を活かし、長野も広島で引退するのではなく、現役の間に巨人に戻ってきてほしいと考えたのでしょう。人格者としても知られるベテラン・長野には、チームの潤滑油としての働きも期待される。そのうえで、来季3年契約の2年目を迎える原辰徳監督の後は、阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチの昇格が濃厚です。そうなった時のために、長野を今のうちに復帰させ、阿部監督時のコーチとして起用したいという思惑もあるのでは。2人は同時期の主力で3連覇も経験していますからね。長野はドラフト指名を二度も拒否して巨人に入団したほどの選手ですし、将来はスムーズに巨人のコーチになってもらうための布石でしょう」
長野の巨人復帰は、数年後を見据えてのことのようだ。