冬が近づき、新型コロナウイルスの第8波やインフルエンザの流行が懸念される季節になった。だが度を過ぎた除菌やウイルスの排除は逆効果になるという。秋津医院院長の秋津壽男さんは、手の洗いすぎやうがい薬の使用はやめた方がいいと注意を促す。
「もちろん自宅に帰ってきたら手洗いをした方がいいですが、何度も、また石けんを使って洗いすぎると皮膚のバリアが壊れて、手荒れや湿疹の原因になる。過度な殺菌は常在細菌も殺してしまう可能性があるので、うがいも水かお茶でするのがいい。うがい薬を使っている人は風邪をひいたときの治りが悪いというデータもあります」(秋津さん)
『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』の著書がある外科医の山本健人さんは、けがをしたときに傷口を消毒するのは逆効果だと指摘する。
「昔は消毒するのが常識でしたが、いまでは消毒しない方が一般的。傷の治りが悪くなります。そもそも皮膚には常在菌がいるため、消毒しても周囲の菌が体に入ることは防げません。消毒液がしみて痛い思いをしてまで消毒する必要はなく、水道水や生理食塩水で泥や砂などを洗い流して、清潔に保つだけで充分。ただし、けがをした指をなめるなど、唾液をつけるのはNG。口の中は細菌だらけです」(山本さん)
痛みをがまんするのが逆効果なのはマッサージや整体も同様。
「パキパキと音を鳴らす整体や痛みを伴うマッサージは、あまり信用できません。元来、マッサージは治療行為ではなく、リラックス効果によって筋肉を緩めるために受けるもの。痛ければ逆効果になります」(秋津さん)
健診も病気予防につながるが、その数値の中には意味がないものもある。東海大学名誉教授の大櫛陽一さんは、腹囲やBMIは気にしても仕方がないと言う。
「40〜74才を対象に行われている特定健診では、本来なら問題がないはずの受診者の約半数が“メタボ”であると判定されています。特に女性は要注意です。腹囲はへその高さで測りますが、女性の骨盤は大きいので、男性よりも数値が高くなる傾向があります。
また、日本では肥満の基準もかなり厳しい。現状、BMI25以上は肥満とされていますが、欧米も日本もBMI25〜27.5の人は、どの年代でも病気になりにくく死亡率が低いというデータがある。国際的な肥満の定義はBMI130以上。健診で肥満と判定されてダイエットをすると、かえって死亡率が上がる可能性もあります」(大櫛さん)
コレステロールや中性脂肪に関しても同様だ。
「LDLコレステロールの高値基準は欧米では190mg/dlに設定されている一方、日本では120mg/dlと極端に低く設定されている。しかし特に女性および高齢者はコレステロール値が高い方が元気なのです。また、血中の中性脂肪は随時変化しているため、一瞬の数値を検査で捉えたところで意味がない。常時250mg/dlを超えている人は遺伝子異常の可能性がありますが、毎回数値に上下があるならば大丈夫です」(大櫛さん)
科学や医学の進歩は目覚ましい。新しい情報をアップデートしよう。
※女性セブン2022年11月10・17日号