放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、中村勘九郎が座長を務める平成中村座についてつづる。
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浅草寺境内にて「平成中村座が再び」ときいて江戸っ子の血がさわぐ。十八世中村勘三郎のあの情熱を想い出し、胸にジーンと来るものがある。
今回は息子の中村勘九郎、七之助、そして獅童らにその子供達まで馳せ参じ、若さと威勢の良さがテントの中にムンムン。なんたって目玉の芝居が(10月、11月)私も十八番とした古典落語『唐茄子屋政談』から『不思議国之若旦那』と来やがった。作・演出があの宮藤官九郎と名乗る悪党クドカンである。ここぞとばかりにやりたい放題。落語も歌舞伎もぶっこわしては再び構築して伝統から一歩前へと進んでいく。本来歌舞伎とはどんどん若い人が書き、その時代その時代でカブイていったものだ。
クドカンの悪知恵だろうがなんと“大人計画”の荒川良々が出演し、場の空気も読まずかきまわしているのが大傑作。何か言われると「あっそれ、梨園のパワハラ?」と部外者がつぶやいているのがおかしい。『唐茄子屋』から獅童の江戸っ子が登場し、落語『大工調べ』の啖呵の言い立てになっていくのが小気味いい。
それにしてもクドカン、何をやってもいいからと言って子供達の前で下ネタ、エロ小咄の『鈴ふり』をやるのはアハハどうかネ? 客席は全員、御婦人。股間でチリンチリンと鳴ったらみんな下を向いていた。このシーンだけ「WAHAHA本舗」かと思った。
平成中村座を実現させた座長・勘九郎の手腕おみごと。天国できっとお父っつぁんは「まだまだ」と言ってるかもしれないけどネ。しかしこうして歌舞伎は大衆芸能の現役であり続ける。
10月19日、まさにこれぞ大衆エンターテイメント、国際フォーラムA、5000人のおばちゃまの前で気持良く歌う「山内惠介のツアー」。当人もしゃべっていた。 どーーしてこんなに声が出るんだろう~~ッ。声が本当につき抜けて出ていた。デビューして22年の39歳。最も歌謡曲として脂の乗り切ってくる時期だろう。