国際情報

【フォトレポート】ロシアによる「ビザなし交流」一方的破棄から3か月 訪問者の宿泊施設「ムネオハウス」の現在

2004年の“ムネオハウス”。ビザなし交流に同行した筆者もここに宿泊した(撮影/山本皓一 2004年)

2004年の“ムネオハウス”。ビザなし交流に同行した筆者もここに宿泊した(撮影/山本皓一 2004年)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、日露関係にも多大な影響を引き起こしている。西側諸国と連携した対露経済制裁への“報復”として、プーチン政権は北方領土を含む極東地域で軍事演習を活発化させ、さらには1992年に始まった「ビザなし交流(北方四島交流事業)」の一方的な破棄を通告した。その「ビザなし交流」の象徴が、国後島に建てられた“ムネオハウス”である。日露が“断絶状態”を迎え、施設はどうなっているのだろうか。ビザなし交流に同行取材したことのある報道写真家・山本皓一氏の写真とともにレポートする。

 * * *

 北方領土はロシアではクリル諸島(千島列島)の一部とされ、行政区分としてはサハリン州に属する。ウクライナ戦争勃発後、同州の州都ユジノサハリンスクに渡航した日本人ビジネスマンが語る。

「もう2年半もムネオハウスに日本人は誰も来ていない。そのため、今はもっぱらモスクワなどから訪れるロシア人旅行者向けの宿泊や、地元住民のイベント会場に使われていると聞きました」

 国後島の主要都市である古釜布に1999年、75人を収容できる2階建ての宿泊施設が完成した。正式名称は「日本人とロシア人の友好の家」だが、日本では“ムネオハウス”の通称で知られている。

 総工費4億円超の施設の発注元は外務省だが、当時自民党の衆議院議員だった鈴木宗男氏(現在は日本維新の会所属の参議院議員)が外務省に大きな影響力を持っていたことや、同氏の地元・根室の建設業者が工事を受注していたことなどから、現地では「ムネオ先生が建ててくれた家」と認識されていた。それが“ムネオハウス”と呼ばれる所以だ。

 施設は「ビザなし交流」における訪問者の宿泊や、日本の政治家による現地視察など、日本人関係の行事で多用され、ある時期まで施設の入り口には日本語で「鈴木さん、あなたは私たちの友達です」と書かれたボードが掲げられていた。

 だが、2002年に鈴木氏に関する様々な政治疑惑が火を噴き、鈴木氏は有罪判決を受ける。それによって“ムネオハウス”も利権の象徴として槍玉にあげられた。だが、施設が取り壊されることはなく、“ムネオ色”を薄めながら使われ続けてきた。

「竣工から20年以上になりますが、近年まで頻繁に利用されていました」

 そう語るのは国後島への渡航取材経験がある全国紙記者だ。

「2006年にカニかご漁船『第31吉進丸』がロシア国境警備隊に銃撃されて甲板員1人が死亡した際、連行された船長ら3名はムネオハウスに拘束されました。もちろん『ビザなし交流』の宿泊場所としてもずっと使われていて、2019年に交流事業に同行していた丸山穂高・衆議院議員(当時)が、『戦争しないと領土は戻らない』『女性のいる店で飲ませろ』などと発言して大問題となったのも、ムネオハウスでの出来事でした」

 2019年10月には、日本とロシアのパイロット事業として位置づけられた、初の「北方領土観光ツアー」が実施され、日本から観光客や政府関係者ら44名が国後島に渡航。そこでも“ムネオハウス”が宿泊先に指定された。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン