小栗旬主演で話題を集める三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが注目するのは「ヒゲキャラ」。ペリーさんがこれまでの“三谷大河”の人気ヒゲキャラを振り返る。
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ヒゲロス。30日に放送された『鎌倉殿の13人』 話を見たファンの多くはそう感じていると思う。ここでは、長く主人公の北条義時(小栗旬)とともに戦ってきた和田義盛(横田栄司)の壮絶な最期が描かれた。
義盛は、北条家に権力が集中したことに不満を持ち、縁者が起こしたトラブルをきっかけについに決起し、御所にまで襲い掛かる。しかし、それこそが和田を滅ぼそうと画策していた義時の狙い。義盛はともに鍋を囲んだりして、親しくなった鎌倉殿(柿澤勇人)がわざわざ戦場に現れ、「お前に罪はない」と言ってくれたことに感激した直後、無数の矢に討たれ、斃れる。
序盤は唐突に義時に「眉毛でも剃るか」と言い出して、片方だけ剃って出てきたり、「難しいことは難しいからわからねえ」ときっぱり言ったり、巴(秋元才加)とはコントのようなバトルも続ける。「絵にかいたような坂東武者」と言われたヒゲもじゃの義盛は、もっとも愛嬌のある武将として描かれてきた。その人物の無惨な最期は、義時の非情さをさらに際立たせる。放送開始から長い時間をかけた作戦だったとも思える。
同時に義盛をきっかけに俳優・横田栄司の存在も際立った。ますます映像作品への出演も増えるに違いない。今は心身不調で休養中とのことだが、元気な復帰を願うばかりだ。
思い返せば、過去にも三谷幸喜作の大河ドラマで、強い印象を残したヒゲ面キャラはいた。たとえば、『真田丸』の本田忠勝(藤岡弘、)は、徳川家康(内野聖陽)の側近武将で、とにかく熱い男。髪の毛もヒゲも眉毛までも真っ黒でごわごわ。それだけでも威圧感があるのに、冑には大きな鹿の角、黒い甲冑の上から巨大な数珠を斜めがけにしているのである。
喜んでも怒っても、吠えるような大声で大汗をかく。何もかもちょっと大きめ。慎重派の家康は、忠勝に「殿っ!!」と呼ばれただけで腰が引けて見えたが、愛すべき人物ではあった。このドラマで、藤岡弘、の熱い面白さに気づいた視聴者も多かったはずだ。なお、来年の大河ドラマ『どうする家康』で忠勝を演じるのは山田裕貴。黒ヒゲとは無縁な気も…。