中国のチベット自治区の区都ラサ市内で10月下旬、中国政府による厳しい「ゼロコロナ政策」に抗議する異例の大規模デモが発生し、当時の状況を撮影したとみられる映像が明らかになった。ラサでは2008年にチベット族による激しい暴動が起きたが、今回のデモ参加者の大半は漢族(中国人)の出稼ぎ労働者で、「ただ、故郷に帰りたいだけだ」などとの悲痛な叫びを上げている。BBCが報じている。
BBCが入手した中国SNS「微博(ウェイボー)」の複数の動画には、数百人が市内をデモし、警官隊と衝突している様子が映っている。
別の動画では、当局者らが道路の片側を封鎖。当局者の1人は拡声器で、人々に冷静になるよう促し、「分別をもって帰ってください」などと呼びかけている。
しかし、この抗議デモについて、いまのところラサ市政府などによる公式コメントは出されておらず、国営メディアも報じていない。
ラサは新型コロナウイルスの感染対策でこれまで3カ月近くロックダウン(都市封鎖)状態が続いている。
他の映像では、夜の路上に数十人がたむろし、そのうちの1人の男性が中国語で、「(人々は)あまりにも長い間、封鎖状態に置かれてきた。この地域にいる人の多くは、ただ働いて金を稼ぐためにやって来た。中国本土でそれができるなら、ここに来てはいない」と叫んでいた。
また、「私たちは家に帰りたいだけだ」という文字を書いた横断幕を掲げて、行進する人々を映した映像もあった。
直接抗議デモを見たわけではないが、動画をいくつも見たというラサの住民の1人はBBCに対し、「人々は毎日家に閉じ込められ、生活はとても苦しい。ラサでは今、物価がとても高く、大家は家賃の支払いを厳しく求めている。労働者は故郷に帰ることも許されていない。出口がない状況だ」と話している。