現在、テレビ業界には「放送をリアルタイムで見てもらい視聴率による収入につなげたい」というだけでなく、バラエティもドラマのように「配信再生回数を増やすことで、今後は配信収入を得ていきたい」という狙いもあり、そのためのコンテンツが吟味されているのです。
また、『アナザースカイ』は今秋から『Google Pixel presents ANOTHER SKY』という番組名に変更されました。Googleの一社提供であり、その後押しがあったからこその復活であることも1つの理由でしょう。
バラエティも配信再生数が必要に
そしてもう1つふれておかなければいけないのは、『クレイジージャーニー』が終了した経緯。2019年9月で同番組が終了した理由は、爬虫類ハンターの放送回で、スタッフが事前に準備した生物の捕獲シーンを撮影した不適切演出でした。
その後、放送倫理・番組向上機構(BPO)の審議入りし、「放送倫理違反があった」という見解を発表。「もはや復活は不可能」と言われていましたが、再発防止策を徹底しつつ昨年5月に特番が放送され、今秋に復活を果たしました。復活を願う声が多かったとはいえ、しかも深夜からゴールデンタイムに昇格させたことを見ても、これまでのテレビ業界とは異なる動きであることは間違いないでしょう。
TBSの月曜ゴールデンタイムは長年、最下位に落ち込むなど低視聴率に苦しみ続けてきました。いわく付きの『クレイジージャーニー』を救世主のように編成したのは、それだけ期待値が高いとともに、新たなヒット企画を生み出せていない焦りも見え隠れしています。
今秋は民放5局のゴールデン・プライムタイムでバラエティの新番組が計5つしかありませんでした。しかもそのうち2つが教養系の番組であるなど、各局がバラエティの企画に苦しんでいる様子が伝わってきます。
もともと旅番組は老若男女を問わないジャンルであり、各局にとっては貴重な存在。過去にどんな経緯があったとしても、それを上回る価値があるということであり、「コンテンツとしていいのであればどんどん生かしていこう」という意識が感じられます。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。