読書の秋。涼しく長い夜にじっくりと読書を楽しみたい人のために、おすすめの新刊4冊を紹介する。
『星占い的思考』
石井ゆかり/講談社/1650円
占いというのはアリなのか? そんな問いを星占いの第一人者が紐解く。曰く、人間は「象徴」が大好き、アレとコレを結び付け、そこに意味を見いだし、その物語を生きる。ジンクスなどがいい例。表の世界は科学だが、害がない限り裏の世界で生きるのを許されたのが占いだ、と。“だって楽しいもん!”では済ませないのが第一人者たる矜持かも。文学書からの引用も深遠。
『リバー』
奥田英朗/集英社/2310円
10年前、未解明に終わった女性絞殺事件。酷似する事件が発生、群馬県警と栃木県警が共同捜査に奮起する。地図を用意し登場人物表を自分で作成。人物と共に移動し、針金だった人物像にエピソードという肉付けをしていく過程が無上に楽しい。サイコパスや昭和の刑事、新米女性新聞記者や暴走する被害者遺族などが入り乱れる群像小説なのに、こんなに楽しくっていいの!?
『怒鳴り親 止まらない怒りの原因としずめ方』
土井高徳/小学館新書/946円
著者は治療的里親として知られ、北九州で虐待児や非行児童、発達障害児らと暮らす「土井ホーム」を運営する。長年の経験から「怒鳴らないほうが子育てはうまくいく」と断言、子供の発達段階の特徴を知れば怒りも制御できるとし、叱るときは短く、言葉は優しく、ほめるときこそ「しっかりほめる」などと助言する。親が自分の中に住む“傷ついた子供”を自覚するのも大切。
『ファーストクラッシュ』
山田詠美/文春文庫/737円
母に先立たれ、神戸から東京の高見澤家に引き取られた11才の新堂力。麗子(気位の高い12才)、咲也(文学少女の10才)、薫子(無邪気な6才)の三姉妹が歳月の語り手になる構成で、力の登場で姉妹は未知の感情を泡立たせ、それにふさわしい言葉を獲得していく。文学は言葉でできている。その始原に遡るような試みを口語体で行ったのが新鮮。ラストの甘さに思わず頬が緩む。
文/温水ゆかり
※女性セブン2022年11月10・17日号