ライフ

オラオラ系ブームから10年が経ち、当時入れた和彫りのタトゥーを後悔する人たち

1980年、都心にあらわれた暴走族。2000年代以降、大人になったかつての若者たちが中心になって旧型のバイクを改造して集団走行するようになったのが旧車会の始まりだと言われている(時事通信フォト)

1980年、都心にあらわれた暴走族。2000年代以降、大人になったかつての若者たちが中心になって旧型のバイクを改造して集団走行するようになったのが旧車会の始まりだと言われている(時事通信フォト)

 差別のない世界を目指そうというかけ声は立派だが、現実は厳しい。何十年か先の未来にはそういった世の中になっているかもしれないが、今日、明日を生きていく自分たちにとっては、厳然と存在する違いを受け入れざるを得ない。ましてやそれが、何か強い信念のもとではなく、人よりかっこよく、強く見えるようにしたいからという若いときの見栄が動機だとしたら、差別反対と声高に叫ぶのも憚られるというものだ。ライターの森鷹久氏が、2010年頃のオラオラ系ブームにのって和彫りの入れ墨をいれた人たちのその後についてレポートする。

 * * *
「こんなに早く後悔することになるとは思いませんでした…。何をするにも困りますし……」

 埼玉県在住で、都内の不動産店に勤務する町田稜さん(仮名・20代)は、ややふっくらとしたスーツ姿に穏やかそうな顔つきで、一見すると、どこにでもいそうなサラリーマンだ。しかし、町田さんには悩みがある。それは、17歳の時に友人や当日交際していた彼女に勧められ、背中一面、そして右肩から手首に至るまで、純日本式の「入れ墨」を入れてしまったことだ。

「当時は不良っぽいのがブームで”オラオラ系”と言われていました。体を鍛えて、日焼けサロンに行って入れ墨を入れ、見た目をいかつくする。当時は高校生でしたが、髪はパンチパーマに近かったし、親からも相当反対されましたけど、金を作って(入れ墨を)入れた感じです」(町田さん)

 筆者も、そんな”オラオラ系”の若者向け雑誌制作に携わった経験があるが、彼らの出立はというとパンチパーマに黒いセットアップという時代を超越したとしか思えない見た目で「昔ながらの不良が今さら流行るのか」と驚くくらい、オラオラ系ブームは全国で盛り上がりを見せていた。ちょうど、かつての暴走族だったという中年層達が、当時乗り回したバイクに再びまたがり、集団で走行する「旧車会」ブームとも相まってなのか、全国各地に似たような見た目の人たちが存在したのだ。その結果としてなのかは不明だが、未成年に入れ墨を施すような、明らかに危ない「彫り師」も登場していた。

バイトで貯めた50万円を突っ込んだ

 町田さんの入れ墨代だが、なにも窃盗や特殊詐欺で金を儲けたわけではない。学校をサボって土木関係のバイトをして貯めた金、およそ50万円を全て入れ墨代に突っ込んだのだと苦笑するが、当初は「最高にイケていると思った」と振り返る。

「今ネットではやっている格闘技”ブレイキングダウン”がありますが、あれの走りというか、不良が集まって地下格闘技大会が全国で開催されていました。みんなイケイケで、少し昔っぽい不良の格好というか、硬派な感じに憧れていました。不良ブームですよ」(町田さん)

 その後、単位制高校から専門学校に進学し、入れ墨のことは隠し通して無事卒業したものの、大手建設会社子会社に就職した後、問題は起きた。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン