尾木氏によれば、ハロウィンの騒乱には強い“感染力”があるという。
「日本のハロウィンには宗教的な背景がないので、心理的なブレーキが働きません。渋谷の群衆にはリーダーもいない。その上、酒を飲んで仮装していれば覆面心理が働いて、普段ならしないような危険な行動もしかねない」
ハロウィンと日本の伝統的な祭事の決定的な違いについても、尾木氏はこう分析する。
「お祭りというのは地域が主体になって行なうのが原理原則。徳島の阿波踊りでも仙台の七夕まつりでも中心にあるのは地域で、その地域が参加者のために桟敷や通路を用意する。でも、ハロウィンにはそうした地域との共存がない。ただ群衆がなだれ込んでいるだけ。むしろ地域の人はいつもより早く店を閉め、経済的な損害も受けています」
一方で、タレントの石原良純氏はこう話す。
「幸い韓国のような悲しい事故は起こらなかったし、そもそも、若い人が何かに熱狂するのは悪いことじゃないと思っています。60代の僕にはわからないハロウィンの楽しさが、10代や20代にはあるのでしょう。
僕らの世代も、かつてはジュリアナ東京のお立ち台で踊ったり開幕したばかりのJリーグに熱狂したりで、上の世代からは眉を顰められていた」
そうは言っても石原氏も渋谷の街には同情的だ。
「地元の人たちの迷惑を放っておいていいとは決して思いません。だからこそ共存できるシステムが必要だと思います」
石原氏は、盛り上がりたい人と静かに過ごしたい人、両方のために渋谷にハロウィンエリアを設けることを提案する。
「渋谷の街の一部分を入場料制にして、そこでとことん楽しんでもらうといいのではないか。若者の中にはそれではつまらない、自由が失われるという人もいるかもしれませんが、多摩川の河原だって有料のバーベキューエリアとそうでないエリアを分けたことで落ち着いたわけです。そうやって折り合いを付けていけば、数年後には事態は収まっているのでは」
来年のハロウィンはどうなるのか。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号