カラオケで歌いたい昭和の名曲の魅力はどこにあるのか。ここでは、山口百恵『いい日旅立ち』、井上陽水『少年時代』、美空ひばり『川の流れのように』の3曲について、関係者や現役の歌手に聞いた。
“ただ歌っている子”は類まれな天才だった
「まだ高校生の時、『日本のどこかに私を待ってる人がいる』と強い憧れを持ちました」(62歳・パート)、「高校の文化祭での合唱コンクールで練習した思い出の曲です」(49歳・自営業)といった声が集まったのは、山口百恵の『いい日旅立ち』だ。
音楽プロデューサーの川瀬泰雄氏(75歳)が語る。
「百恵がデビューしたのは14歳。その時は特に歌がうまいわけでもなく、“ただ歌っている子”でした。ところが、ドラマに出演するようになってガラリと変わった。スタジオに入ると歌詞を読み込み、歌の世界に入り込んで表現するようになりました。
『いい日旅立ち』も、サビで大きく歌い上げた後に、しっとりとした低音に移る箇所があります。この歌の最も難しい部分を、百恵は見事に雰囲気のある歌い方で表現しています。芝居で身につけた演技力を歌の世界で表現に変えた、類まれな天才だと思います」
人生の時間旅行をしながら、心が浄化される
「曲、歌詞、陽水さんの歌唱、3拍子揃った聴き惚れる名曲」(62歳・パート)や、「カラオケに行くと、終盤で必ず歌っています。時にはリクエストされることもあります(笑)」(49歳・自営業)と、ファンに慕われているのは、井上陽水の『少年時代』だ。
同曲をカバーしている、歌手の澤田知可子(59歳)が語る。
「郷愁を誘われ、歌うことで人生の時間旅行をしながら心が浄化される名曲です。歌い出しのキーは多くの人にとって得意な音域より高いと思います。声を張ろうとすると喉を締めてしまうので、頭のてっぺんから声が抜ける感じで歌い出すのがコツです。私がカバー曲を出したのは偶然なんです。
夫(音楽プロデューサー・小野澤篤氏)が自宅でゲームソフト用にアレンジしていた時、私が仮歌を入れました。本当は変声期前の少年が歌う企画でしたが、井上陽水さんが聞いて『これでいいじゃない』と即決でそのまま使用となったそうです。私には“夢花火”の出来事でした」