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岡田彰布新監督「二遊間」に特訓の真意 「強い阪神」にはいつも鉄壁の内野陣があったと貴重証言

岡田氏指揮のもと、強いタイガースは戻ってくるのか(時事通信フォト)

岡田氏指揮のもと、強いタイガースは戻ってくるのか(時事通信フォト)

 15年ぶりに指揮官として古巣に復帰した阪神・岡田彰布監督が、まず取り組んでいるのが内野守備の強化だ。秋季練習でも陣頭指揮を執って指導にあたった。今シーズンの失策数は12球団ワーストタイの86。特にレギュラーが固定されていないセカンドと2年連続リーグ最多失策の中野拓夢が守っていたショートの二遊間については、連係・送球ミスでの記録には残らない併殺崩れが多かったとして、厳しくポジション争いをさせる構えだ。“強い時代のタイガース”には二遊間の堅守があったという考えが、岡田氏の念頭にはある。

 岡田氏が主軸を打ち、阪神が球団創設以来初となる日本一を達成した1985年のシーズンは、まさに“新しい二遊間”が躍進のカギを握っていた。ベテラン記者が言う。

「1984年オフ、8年ぶりに指揮官となった吉田義男監督は、正二塁手だった真弓明信を右翼にコンバートして、岡田彰布の二塁手固定を打ち出した。そして、1984年に遊撃でゴールデングラブ賞に輝いた若手の平田勝男(現・ヘッドコーチ)と二遊間を組ませた。キャンプでは吉田監督が自らノックで2人を鍛え上げ、新二遊間コンビで日本一に輝いた。岡田監督としては、この自身の成功体験例が頭の中にあるのだろう」

 これまで正遊撃手だった中野について「あの肩はしんどいやろ」と二塁へのコンバートを示唆したうえで糸原健斗、北條史也、山本泰寛、高寺望夢、渡辺諒らと競わせ、遊撃は小幡竜平と木浪聖也で競わせるものとみられている。

 二遊間の守備がいかに重要かは阪神の歴史を振り返ってもよくわかる。Aクラスの常連で2度のリーグ制覇を成し遂げた1960年代の阪神を牽引したのは、史上最高の守備といわれた内野陣だった。遊撃手には後に監督として岡田氏の二塁手固定を打ち出す吉田義男氏がいた。三塁を守った三宅秀史氏との三遊間も、巨人の「長嶋(茂雄)―広岡(達朗)」と比肩する存在だったが、タイガースの二塁手・鎌田実氏と吉田氏の二遊間も鉄壁を誇ったことで知られる。デイリースポーツ元編集局長・平井隆司氏はこう振り返る。

「鎌田の代名詞ともいえるのがバックハンドトスでした。これはフロリダキャンプで習得したもので、当時の日本球界では使われていなかった。それまでは二塁ベースから6メートル以上離れていると一塁ランナーをフォースアウトにしかできなかったが、バックハンドトスを使うことでゲッツーにできるようになった。吉田、三宅、鎌田がお互いに切磋琢磨しながら技術を磨き、当時は『守備練習だけで銭が取れる』といわれていました」

 鎌田氏は2019年8月に亡くなったが、本誌・週刊ポストの「プロ野球史上最強の二遊間」特集(2015年4月10日号)では、当時の阪神の内野守備についてこのように話していた。

「4年先輩の吉田さんは“牛若丸”と呼ばれていました。スタートはもちろん、捕って投げる動きも他の選手よりワンテンポ早く、それに合わせるのが大変だった。二塁手としてその吉田さんのプレーについていくまでに4年かかったが、それからの4年間の阪神の二遊間は日本一だったと思う。

 遊撃手は強肩を活かし、広い守備範囲を動き回る。黙っていても目立つポジション。一方の二塁手の守備は地味で目立たない。どんなに頑張っても魅せるものがない。そこでアピールするために始めたのがジャンピングスローだった。上空で反転しながら投げるのでジャンプ力が求められた。

 当時の阪神で選手兼任監督だった藤村富美男さんが試合前のシートノックにショーの要素を入れて観客に見せていた。肩の強い三塁手の三宅秀史さんにはライン際のゴロを打ち、吉田さんにはクイックスローができるようにバントを転がす。僕に対しては二塁ベース上に打ってジャンピングスローをさせた。相手チームもベンチから見ているし、どこの球場でもゲーム前のシートノックは拍手喝采でした(笑)」

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