昭和の歌姫・美空ひばりさんがこの世を去ってから30年以上の月日が流れたが、日本の音楽シーンに刻まれた功績は色あせることはない。ところが、昭和歌謡からはほど遠い「9年前の殺人事件」に、ひばりさんの名前がチラついて──。
高級感あふれる名門セレブコースとして、バブル期に名を馳せた福岡県内にあるゴルフ場。その一角に、木々に囲まれ静謐な空気をまとった六角堂がある。中には、金色に輝く仏像と「慈唱院美空日和清大姉」と戒名が記された位牌が安置されている。
1989年6月24日に亡くなった昭和の歌姫・美空ひばりさん(享年52)の最後の後見人といわれた上杉昌也氏(78才)が、ひばりさんのために建立したものだ。上杉氏は、ひばりさんの資金トラブルの解決や晩年の闘病生活を支え、ひばりさんが「最後に頼った男」と呼ばれている。その上杉氏は、現在まったく異なることでスポットライトを浴びている──。
10月28日、福岡県に本部のある特定危険指定暴力団「工藤会」の幹部・田中幸雄容疑者(56才)が逮捕された。逮捕容疑は、2013年12月、全国に飲食チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービス本社(京都市山科区)前の駐車場で、当時の同社社長・大東隆行氏(72才)を殺害した、殺人と銃刀法違反だ。
事件当初、拳銃で4発銃撃し、胸や腹に命中させるという手口から、実行犯をめぐり「プロのヒットマン説」が取り沙汰された。2015年12月には新聞各紙が、「現場近くから遺留品が見つかり、検出されたDNA型が九州に拠点を置く暴力団組員の男と一致した」と報じた。この男こそ田中容疑者だった。しかし、決定的な証拠が固まらないまま9年が経過し、迷宮入りの可能性さえ囁かれていた。
「状況証拠などから、第一容疑者として田中容疑者の犯行は疑われていました。しかし、大東社長と田中容疑者にまったく接点がなく、犯行の動機もつかめなかったため、捜査は暗礁に乗り上げてしまった」(全国紙社会部記者)
そんな中での、急転直下の逮捕だった。京都に本拠を置く王将の社長を撃ったのが、なぜ九州の暴力団関係者だったのか。田中容疑者の逮捕後、キーマンの1人として警察の聴取を受けたのが、上杉氏だった。