2年連続で勝率が5割を下回り、日本シリーズはおろかCS進出さえ逃した巨人。来季に向け原辰徳監督(64)の続投と新コーチ陣の就任が発表されたが、これに怒りを隠せないのがOBの広岡達朗氏だ。監督として幾度もチームを優勝に導いた広岡氏。いったい誰なら巨人を立て直せると考えるのか。【全3回の第3回。第1回から読む】〈文中一部敬称略〉
育成は工藤が第一人者
原監督の采配に疑問符がつくなか、後任は誰が望ましいのか。巨人は「生え抜きで4番かエース」が監督候補の不文律で、過去にオーナーの渡辺恒雄氏が星野仙一氏の抜擢を試みてOBから強く反対されたこともある。
可能性が高いのは阿部慎之助(43)新ヘッドの監督昇格だ。日本シリーズを戦ったヤクルト・高津臣吾(53)とオリックス・中嶋聡(53)両監督はともに二軍監督を経験後、自身が育てた若手選手とともにチームを作りあげた経緯があり、昨年途中まで二軍監督を務めた阿部にも期待がかかるが、広岡氏は「原巨人の二軍では指揮官の考えは学べない」と断じる。
「今の巨人の二軍や三軍は、まるで姥捨て山です。一軍のコーチをやらせても使いづらいし、性格的に合わないからと判断されたコーチばかりになっている。本来二軍監督は一軍監督の考えを受け継いで指揮を執らないといけないというのに、です。この状況で阿部が原から学べるものは何もない」
阿部でないとすれば誰が適任なのか。ファンからは松井秀喜(48)の監督就任を期待する声も多く聞かれるが、広岡氏は懐疑的だ。
「確かに松井にはその資質があるかもしれないが、アメリカでの生活があるから日本には帰らないのではないか。それに松井を助ける優秀なコーチが必要です。FAで獲得した選手をコーチにすると約束する今の巨人では松井のサポートは難しいのではないか」
伝統あるジャイアンツの人材難は深刻だ。
「今の巨人を託したい生え抜きOBは、はっきり言って一人もいません。みんな勉強が足りない。フロントが有力な候補者をアメリカにでも送り、外の野球を勉強させるような試みが必要ですよ」
巨人再建に必要な人材は誰か──。名前が挙がったのは、前ソフトバンク監督の工藤公康(59)だ。
「本人にやる気があるかはわからないが、監督経験者で期待できるのは工藤公康ぐらいだね。選手に教えながら勝つことを実践したのは、工藤が第一人者です。肩書きをもらうと嬉しがる監督やコーチばかりのなかで、苦労も実績も重ねてきたことは間違いない。充電期間を経て、もう一度監督をやればいいんです」