近年の研究により、「第二の脳」と呼ばれ、がんから認知症まで全身の健康と直結することが次々と明らかになりつつある腸。活性化させ、ケアするための「あの手この手の腸活」が一大ブームとなっているが、光あれば影あり。【前後編の前編】
「美を保つ秘訣は腸活」と公言する萬田久子(64才)、甘酒で腸を整えるのが日課の永作博美(52才)、“マイぬか床”を持つ石原さとみ(35才)──世代を超えて変わらぬ美しさを保つ彼女たちの共通点は「腸活」だ。
女優たちがこぞって取り組む腸活は、日本健康食育協会が20〜50代女性を対象に行った調査によると、4割が「やったことがある」と回答。7割近くが興味・関心がある一大ムーブメントになっている。
しかし、便秘外来の専門医で松生クリニック院長の松生恒夫さんは、この傾向に警鐘を鳴らす。
「“腸活”と一口に言っても食事や運動、マッサージなどさまざまな方法があります。腸内環境に関心を持つ人が増えたのはいいことですが、やり方を間違えれば腸を痛めつけ、腸内環境を悪化させる原因になる可能性すらあるので、注意が必要です」
あなたがせっせと行った“腸活”で体が悲鳴を上げているかもしれない──。
玄米の食べすぎで便秘になる
まず見直すべきは“腸にいい”とされる食べ物に関する知識だ。これまで7000人以上の腸内環境を調べてきた医薬基盤・健康・栄養研究所ヘルス・メディカル連携研究センター長の國澤純さんは、「腸の健康のために食物繊維を摂取すればいい」という単純な考えには注意が必要だと指摘する。
「確かに『食物繊維』は腸内環境を整える善玉菌のエサとなる重要な成分ですが、単純に摂取すればいいというわけではありません。食物繊維は、腸内の『善玉菌』によって分解されて、『短鎖脂肪酸』に変わることで、より高い効果が期待できるのです。
つまり、善玉菌をできるだけ増やし、さらに善玉菌が持つ『善玉酵素』をうまく働かせることが必要です。そのためには、善玉酵素の働きをサポートするビタミンやミネラルもしっかり摂取することが肝要です」
食物繊維が豊富で健康食の代名詞ともいえる玄米を腸活に取り入れている人も多いが、松生さんは懐疑的だ。
「腸の不調を抱えて来院する人の中には、玄米が原因であるケースも少なくありません。食物繊維には水に溶けない『不溶性食物繊維』と、水に溶けてゼリー状になる『水溶性食物繊維』の2種類があり、それらをバランスよく摂ることで便通が改善されます。ところが、玄米が含有する食物繊維はほとんどが不溶性。食べすぎると腸でふくらみ、お腹が張ったり便が硬くなったりして便秘の原因になります。食べすぎに注意して、1日に1回はキウイフルーツやいちごなどの水溶性食物繊維の多い果物を摂ることを意識しましょう」(松生さん)